表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Perfect World  作者: M78星雲人(光の戦士)
第1章
21/21

8-2

つづきです。



 そして現在。勝馬は教育指導中だった。

「さて……」


 ここは折りたたみ式で簡単な作りの机やイスが並ぶ全体的に白で統一されたシンプルな構造の無機質な部屋だった。

 なんとも静かな空間で自分の声以外は時計の針の音ぐらいしか聞こえない。まったく誰もいない図書館のような場所だった。


 そして今、この空間には勝馬と大西二人しかいなかった。

(こんな場所でこんなオッサンに教育なんか…………)

 大西はオッサンだった。

「え~~っと……なんだったっけ」

 勝馬は、書類に再度目を通した。

(そうだったそうだった……確かこのオッサンは、あれだな)


「大西さん、あんた思考障害なんだよ」

「……なんですか? それ?」

「名前の通り障害ですよ。思考の」


 大西は、どうも不満そうな顔をしていた。自分が何かの障害とか認めたくないのだろう。

「障害……私がですか?」

 この場では勝馬は先生なので大西も丁寧な言葉で話をしないといけない。

 また、勝馬もそうしている。


「そうなりますね……信じたくない気持ちは分かりますよ。誰だってそうですからね」

 とても自分が障害とか誰だって信じたくはないだろう。

「障害なんですか……私が……」

「厳密に言うとそうなります」

「……」


 大西は、「ジョーダンじゃないぞ……」的な顔をしていた。相当ショックだったのだろう。

 また、この時代では新種の障害が複数発見された。思考障害もその一つだ。


「私が障害ですか……」

 大西はかなり意気消沈していた。

 そして、今ここで教育にくるまでの大西の行動はかなりヒドイものだった。


それは少し昔のこと。

「いいや! 行け! 意地でも行け! 死んでも行け! おい聞いてんのか? おい!」


 学校に来ない生徒がいた。長いこと学校を休んでる生徒だった。


 また、この時代でも普通の学校もないわけではない。当然体育の授業もまだあるし保健の授業もあるので体育教師は存在する。

「……」

 生徒は黙っていた。

 大西は学校に行っていない生徒の家にまで乗り込んできて意地でも学校に行かそうとしていたのだ。

「あんな学校には行きたくないです……」

「それでも行かないといけないんだよ!!」

「あんな荒れた学校には行きたくありません」

「それでも行かないといけないんだよ!!!」


 もはや、大西は機械のようだ。

 山田が学校を拒絶するのにも理由があるし、それに大西の会話には説明がない。

 ただ単に、説明もなく意見を押し付けているだけだ。それは、適切な会話とはいえない……。

 また、山田の通っている学校は荒れていたのだ。そういったことが原因で登校する気なくなり休んでしまっていたのだ。そしてそんな理由を大西は何も考えない……。

 大西はプログラムのような人間である……。


 そしてまた別の生徒に対しても、


「これはお前が悪い。我慢ができなかったお前が悪い。だからお前が反省しろ。お前が悪い、お前が悪い。それが規則だ」


 そしてまた別の生徒に対して……。

「それが規則だから、どんな理由があっても今の学校の授業を受けろ。意地でも出ろ。絶対出ろ」


 大西はいつもいつもこのような感じだ。


「意地でもやれ」「死んでもこうしろ」「規則のみがすべてだ」


 このようなことばかりしか言わない。ロクな説明もない押し付けばかりなのだ。

 このような言動には誰も従いたくならない。また、無視していることが多すぎる。とにかく、適切なアトバイスとはいえない。

 しかも勝手な判断をしているし、結局自分の都合しか考えていないのだ。


(しかしこの人本当に違和感とかなかったのかな……)

「大西さん、あんた本当に自分の言動に違和感なかったんですか?」

「いや……それは……」


 大西は少し困ったような顔をしていた。

 しかし普通ならあるはずだ。いくら規則とは言えど、そんなに強制的に物事を押し付けることに多少なりとも違和感が……。

「本当にないんですか?」

「あまり……」

(やっぱこの人ちょっと脳の出来が悪いのかな……この人がやってる方法がうまくいくはずないのにな。そんなことぐらい俺でもわかるってのに……)


 そもそも大西の考えもやっていることも正しくないのだ。なぜなら、人に物を教える場合、

正しいことであってもそれをまともな説明もなく強要することは間違っているのだ。

 また、この時代ではそれをやってしまうと罪にもなるのだ……。

「大西さん、あんた『正しいことであればなんでも押し付けていい』って考えてませんか? 


それ今の法律だと場合によっては逮捕になる場合もあるんですよ……」

「……そうなんですか……私は全部は知りませんでした」

 大西は下を向いたまま暗い返事をした。


「大事なことなので、よく覚えておいてくださいね」


 実際大西は、強要罪の存在ぐらいなら知っていたのだろうが、その厳密な定義がわからなかったのだろう。あまり自分でも認識がないまま法律を違反していたと言うことは、この時代でも昔でもたまにあることだ。

 もっとも、今回の大西の行為が必ずしも強要罪に該当する訳ではないのだが。

 また、大西の場合本人の性格も原因なのだが……。


「それとね、あんた、なんか……『死んでも規則に従わないといけない』みたいな考え持ってるでしょ? どうもあなたの言動からはそんな強迫観念や強制感情のようなものが疑われるんですよね……」

「それは……」

「ありますよね……」

「はい……」

(やっぱそうか……それも障害の特徴だな)


どうもありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ