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「プラグド」社会の完成と、その「外部」を求める衝動
当時の社会は、SIDCOMが提供する正規SIDとSID-OSによって構築された「プラグド」な世界が主流であった。
人間の思考、感情、コミュニケーション、ほぼ全ての経済活動ががSIDネットワークに接続され、最適化されていた。
情報は瞬時に共有され、感情はAIによって解析され、倫理は「集合的良識プロトコル」としてリアルタイムで生成された。
これは、効率性、利便性、そして社会の調和を最大化する「理想の社会」として謳われていた。
しかし、いかなる完璧なシステムも、必ずその「外部」あるいは「異物」を生みだしてしまう。
この完成された「プラグド」の世界でも、一部の人々に、そのシステムからの逸脱を求める根源的な衝動を生み出すこととなった。
それは、監視されることのない自由、最適化されない生々しい感情、そして「わかる人だけわかる」というようなニッチな欲望を追求する、きわめて人間的な渇望でもあった。
この衝動が、二つの異なる、しかし同じように「外部」を求める生き方を生み出したのである。




