4.人跡未踏(じんせきみとう)の領域③--〔戦わない判断〕
第10話を開いていただき、ありがとうございます。水月です。
基本、2日に1シーンのペースで更新していく予定ですが、
ここのシーンはテンポ重視で文字数を少なくしています。
その為、1日1シーンで投稿していきます。
それでは、本日のシーンもどうぞお楽しみください!
テンマはゆっくりと剣を構えた。
家にあった図鑑では、弱い魔物だと書かれていた。
それでも、魔物であることに変わりはない。
ザイドを探さなければならない今、不意を突かれるわけにはいかなかった。
小さな魔物は逃げる様子もなく、その場で身体をぷるりと揺らす。
身体の奥では、褐色の淡い光がゆらりと揺れていた。
思わず、その光と目が合ったような気がする。
だが、よく見れば目らしきものはどこにもなかった。
「……」
テンマは剣先をゆっくりと近づける。
威嚇するように軽く押し出すと、小さな魔物は弾かれるように岩壁へ転がった。
コツ。
小さな音を立てて岩へ当たる。
そのまま潰れることもなく、身体をぷるりと震わせると、何事もなかったように起き上がった。
「……?」
図鑑では、身体は柔らかいと書かれていたはずだ。
目の前の個体は違う。
どこか芯があるような、不思議な弾力を感じた。
それでも、襲ってくる様子はない。
テンマは小さく息を吐いた。
(「何でも倒す」ことが全てじゃない)
試験官の言葉が脳裏をよぎる。
(戦うべきか、戦わないべきか。その場で判断することも、冒険者には必要だ)
もう一度、小さな魔物を見る。
敵意は感じない。
(弱い魔物だ)
(襲ってくる様子もない)
(なら……今は放っておいても大丈夫だろう)
ザイドを探す方が先だ。
そう判断し、テンマは剣を下ろした。
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