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第45話隠したもの

夜の空気は冷たく、部屋は静まり返っていた。

玲花はベッドの上に座ったまま、眠れずにいた。


手の中には古びた鍵。

冷たい。小さいのに、妙に重く感じる。


「……」


昼間のことが頭から離れない。


——覚えてないの?


——怖かったんだよ


「……」


シオンの声。


優しい顔。


触れてくる手。


「……」


でも——


袖の中に鍵を隠した瞬間。


自分でもわかった。


「……」


もう、


前と同じじゃない。


「……っ」


鍵を強く握る。


そのとき。


コンコン。


「……っ」


体が跳ねる。


「玲花?」


シオンの声。


「起きてる?」


呼吸が乱れる。


鍵をとっさに枕の下へ押し込む。


「……うん」


声が少し掠れる。


「入るね」


扉が開き、シオンが入ってくる。


いつも通り。


穏やかな顔。


「眠れない?」


やさしい声。


「……ちょっと」


玲花は視線を逸らす。


シオンが近づく。静かに。


心臓がうるさい。


気づかれてる?


「……」


シオンはベッドのそばに腰を下ろす。


近い。


「……玲花」


名前を呼ばれる。


「震えてる」


「……寒いだけ」


とっさに返す。


「そっか」


否定しない。


でも——


視線が、ゆっくり動く。


ベッド。


枕。


「……っ」


息が止まりそうになる。


シオンは何も言わない。


ただ、静かに玲花を見る。


「……何か隠してる?」


穏やかな声。


「……!」


心臓が跳ねる。


「……隠してない」


即答だった。


初めての嘘。


「……」


シオンが少しだけ目を細める。


「そっか」


それだけ。


追及しない。


それが逆に怖い。


「……ね」


長い沈黙の後、静かにシオンが口を開く。


「玲花」


やわらかい声。


「俺に隠し事するとき、すぐ目逸らすよね」


「……っ」


呼吸が止まる。


全部、見抜かれてる。

「……」


でも、


シオンは笑ったまま。


「……まあ、いいけど」


軽く言う。


許すみたいに。


玲花は何も言えない。


「……無理に聞かないよ」


穏やかな声。


「玲花が、自分で話したくなるまで待つよ」


優しい言葉。


でも——

逃げ場がない。


「……」


シオンが立ち上がる。


「今日は早く寝なよ」


頭を撫でる。


いつもみたいに。


「……おやすみ」


扉へ向かう。


玲花は動けない。


扉の前で、シオンが止まる。


振り返らないまま。


「……玲花」


静かな声。


「夜は、一人で歩かないでね」


「……っ」


息が止まる。


「危ないから」


やわらかく続ける。


どうして。


鍵のこと、知ってる?


「……」


シオンはそのまま出ていく。


扉が閉まる。


静かに。


「……っ」


玲花は息を吐く。


全身の力が抜ける。


枕の下へ手を入れる。


鍵は、まだある。


震える指で掴む。


時計は深夜を回っている。


屋敷は静か。


「……」


玲花はゆっくり立ち上がる。


音を立てないように。


扉へ向かう。


廊下。


暗い。


誰もいない。


それでも、


見られている気がする。


足を止めない。


向かう先は、決まっている。


あの部屋。


壁の奥。


扉を開ける。


冷たい空気。


暗闇。


玲花は中へ入る。


机の前へ。


引き出し。


鍵を取り出す。


震える手。


小さな鍵穴がぴったり合う。


「……っ」


息を飲む。


怖い。


でも——


「……」


鍵を差し込む。


ゆっくり。


「……」


回す。


カチ。


小さな音。


その瞬間——


「玲花」


背後から声。


「……っ!!」


心臓が跳ねる。


振り返る。


暗闇の入口。


そこに、


シオンが立っていた。


「……」


怒っていない。


笑ってもいる。


でも——


目だけが、静かすぎた。

――第45話 終――


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