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第八十八話 最終防衛砦

 木樵生活二日目の今日は……午前中でノルマを達成してしまい、速くも木樵生活から卒業することとなった。


 どのみち明日は商人の所へ行かなくてはならなかったし、俺が居るうちに作業を終えることが出来たのは嬉しく思う。


 ノルマを達成したことを通信でマシューに報告すると、砦予定地に資材を運んだらそのまま手伝うよう指示された。


 予定地では今朝からA班の機兵乗り(ライダー)が2機回され、土木作業をしているが、流石に機兵4機では数が足らないからな。手が空いた俺達も回されるのは当然のことだろう。


 これで村の機兵が6機、俺とオルトロスで2機。午後からはかなり作業が進むことだろうな。


 ただしオルトロスは現在自立機動中で中身は居ない。一応、俺と同じような存在であると軽く紹介はして置いたのだが、いまいち理解しなかった者も居たようで、時折中にマシューが乗っていると思って話しかけては聞き慣れぬ声で返事をされ慌てる姿も見られた。


 明日は俺が不在になるが、修理上がりの機兵がさらに3機追加され合計9機稼働できるため問題は無いだろう。


 当初は2機修理可能とのことだったが、資材の用意が思った以上に出来たことと、マシューのスキルもあって最終的には村から12機は出せそうだった。


 それだけ居れば最終防衛作戦にも機兵を回せるし、成功率は格段に上がるだろう。


 こうして俺が考えている間にもレニーの操縦で手が止まること無く土木作業が続けられていく。


 こうなってくると俺は何もしなくてもいいのでは無いか?これはAI系ろぼっとアニメを見ている時にも少し思ったことだったが、実際なって見ると重要さが良く分かった。コクピットから映像を通して外の様子を見るのと、自らの目で見るのでは感覚が違う。

 また、コントロールを預けているとは言えそれは全てでは無く、人で言えば自律神経が制御しているであろう無意識化の部分は、やはり俺の制御が必要みたいで前に試しと完全に俺の制御を切ってみたところ、レニーは俺をまともに歩かせることが出来なくなっていた。


 逆にパイロットがいない場合はどうなるのかと言えば……、そこで一人棒倒しをはじめて叱られているオルトロスを見れば理解出来るだろう。


 さて、砦……と言うよりも俺達が作っているのは城壁のような物ではあるが、それは現在どんな具合かというと基礎となる大木が何本か地中に埋め込まれ、其れに沿って木の杭で基礎柵が立てられ街道を塞いでいる。


 現在はその木柵に沿って岩を置き、さらに強固な砦にしているところだった。


 あまりにも作業が速いのに驚いてマシューに連絡を入れ聞いてみたが、


「なんで作業が速いかって?馬鹿イザーだなあ、まったく。朝から機兵4機でフル稼働してたんだぞ、柵を立てるくらい終わって無くてどうすんだよ!あー、明日にはまた2機修理から上がるからこっちのことは気にしないで良いぞ」


 と、言われてしまった。なんだかマシューの親方度がグングン上昇している気がする……。ルナーサについたら暫くミシェルの家に漬けこんで貰おうかな……幾分か女の子らしさで中和されるかもしれない。


 まあ、それは兎も角機兵を土木工事に使う事による作業効率の向上は考えていなかったな。


 現代戦において、手足を持つ兵器のメリットはデメリットに押しつぶされ、兵器の話にロボットを出したところで鼻で笑われ否定されるのが関の山だが、土木作業となるとメリットは大きいな。


 生身であれば到底手に負えない大きさの資材を片手で持ち、開いた手で打ち付けるそんな芸当が出来てしまう。


 アームを2本備え、其れと似たような事が可能な重機も存在するが手足を備えた機兵ではより細やかな作業が可能だ。


 太い縄をロープのように使って木材を束ねると言うことも簡単にこなしてしまう。台風による土砂災害の復旧工事などをやらせたら大活躍するだろうなあ。


 砦は現在基礎部分の作業が進められているが、最終的に全面を石垣で覆われ、3階部分に轟雷槍が設置されるとのことだった。


 つまり砦の高さは7m前後。結構大きな建造物になりそうだ。

 これを使うにしろ使わないにしろ、用が済んだらこのまま村の南門として使うのも悪くないだろうな。


「おーいレニー、丸太束ねといたから向こうまで運んでいってくれや」


「はーい、任せて下さいよ!」


 バックパックに収納できる俺は運搬係として大活躍だ。いくら機兵とは言え一度に運べる量には限界があるからな。その点俺は無限とも言える量を重さを感じず持ち運ぶことが出来る。


 加工場から施工箇所まで10往復分の量だって1往復で済ませられる。かなりの効率アップに繋がっていることだろう。


 ◆◇◆ 


 作業は夕方まで続けられたが、日が落ちてからの作業は危険が伴うということで互いにねぎらいの言葉をかけながらその日は解散となった。


 宿に帰ると直ぐにレニーはお湯をもらいに走っていった。機兵に乗っての作業とは言えそれなりに体を動かすこととなる。


 意外ときれい好きなレニーは一刻も早く湯を使いたかったのだろうな。


 さて、俺は明日の打ち合わせをしておくか。


 ミシェルに通信を入れるとすぐに応答があった。


 ミシェル率いるC班は現段階ではやることが全て終わり、後は明日以降の仕入れを待つだけだということだ。


 現在季節は初夏、幸いなことにこの時期は王家の森周辺での狩りが活発化し、ルナーサから様々な商品を携えた商隊が数多くフォレムヘ向かうらしい。


 街道で商隊を待つというのは移動販売の焼き芋屋を外で待つほど不毛かもしれないと思っていたんだが、思ったより悪い案ではなさそうだな。


「それで明日はC班から10名と私、A班からは貴方とレニーのお二人を派遣ということでお願いしますね」


「ああ、それでかまわないよ。街道沿いに行くから危険はないと思うが、いざという時はアレを期待してもいいのかな?」


「アレ…?ああ、ウロボロスの護りですね?」


『それに関しては大丈夫だよ。あれからかなり回復したからね』

『ええ、それに以前より力の貯まりが良くって、3回…いえ、2回は発動可能よ』


 ウロとボロスが直々に許可を出してくれた。利用回数が増えているのは頼もしい。



「其れを聞いて安心したよ。正直A班の機兵を何機か連れて行こうかと思ったんだけど、砦を早く作り上げたくてね。あちらに数を回すためなるべく俺だけで護衛をしたかったんだ」


「砦…ああ、轟雷槍と言うアレですわね。轟雷槍…」


「ん?なにかあるのかい?」


 轟雷槍と何か思わせぶりに呟いたミシェルだったが、其れには特に意味はなかったようで直ぐに否定をし、護衛に関する話や、必要な物資についてなど細やかな打ち合わせをし通信を終えた。


 明日で決戦まで約半分だ。特に理由あって決めた期日ではないが、なるべく期日通り作戦を決行したい。


 ここからが正念場だな。

 

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