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第六十四話 謎の声

「あなた達、もういいですわよ。ここなら誰にも聞かれませんわ」


 インカム経由でミシェルの声が聞こえてくる。誰か居るのだろうかと思ったが、スミレに其れを否定された。


『念のためスキャンをかけましたが、人間はおろか魔獣の反応も付近にはありません』


 むう、ならば遠距離対応型の通信端末でもあるのか?レニーやマシューが知らないだけで他国……、ルナーサならそういうのが存在するのかもしれない。


 そう、思ったが其れも否定される。ミシェルではない、第三者の声が聞こえてきたからだ。


「ふう、ようやくか。さて、どうするんだミシェル。あいつらは信用できそうだが、祭壇の間に連れていくのは…」


 少年?女性?声だけ聞いているとどちらかわからないが、興味深い話をしているようだ。そして、もう一人……。


「そうよ、ミシェル。レニーとかいう子はいいけど、マシュー?あの子トレジャーハンターじゃないの。家宝と聞いて狙っている可能性だって……」


 こちらは口調からして女性だろうか。どういう存在かは分からないが、ミシェルの仲間で今回のパーティにやや否定的な考えのようだな。


「でも、聞きましたでしょう?あの場所は……、なんでも今では悔みの洞窟、と呼ばれているとか。名前からして物騒ですわ、私一人であんな所に入るなんて…」


「うむう、以前はそんな事はなかったんだけどな。場所が場所だけに魔獣の住処になってしまったか……」


「そう言われるとあの機兵達は役に立ちそうなんだけど……うーん」


「でしょう?だから貴方達にも理解していただいて、カイザーさん達にも協力してもらわないと…」


「カイザー…か。何処かでその名を聞いたことがあった気がするが……、なんだったか」


「私も気になってたわ。何かしらね?サリサが読んでいた御伽噺だったかしら?」


「サリサ様の?少なくとも私が読んだ本にはその様なお話は見たことはありませんわね。お祖母様から頂いた神話の書にも其のような名前はありませんでしたし、吟遊詩人の詩…かしらね?」


 俺の名前が御伽噺に?レニー以前に名乗ったことがあっただろうか?言われてみれば遠い過去に名乗ったような気もするが、おそらくその時は日本語で名乗ったはずだ。他に俺の名前が漏れるようなものは……。


 聖典マニュアルか?何処からかマニュアルに記載されている『カイザー』が何かの名称として伝わって、神話に書かれた?いやいや、でも俺そんな神話に載るようなことはしてないぞ。


 と、あちらさんの話も終わりそうだな。


「では、良いですわね。カイザーさん達には最後まで協力をしてもらう、ということで」


「しょうがないね。ただ、完全に信用したわけじゃないからね? だから…寂しいけどまた暫く静かにしてるよ」


「そうね、其の方がいいでしょうね。一応監視の目は光らせておくから、信用に足らないとなったら遠慮なく行動に移すわよ」


 おうおう、微妙に物騒なお話をしているな。まあ、俺達は盗賊なんかの犯罪者じゃあない、善良なハンターだ。何か勘違いされているようだが、マシュー達トレジャーハンターだって盗掘者というわけではない。一応国家の許可を取って調査をしている団体だ。


 ミシェルの店の人達かだれかわからないけど、少なくとも彼?らが思っている様な悪いことにはならないさ。


「しかし、どういう仕組みで話をしているんだろうな?」


『気になるますね…。やはり周囲には気配はありませんし、こちらのセンサーを惑わしている様子もありません。恐らくは超長距離の通信を用いたハンズフリー通話のようなものでしょう。インカムを渡したときの反応、覚えてますか?』


「ああ、そう言えばレニー達とも単独通信出来る、と聞いたときにルナーサに帰っても使える、と喜んでいたな。其れが無理だと聞いてがっかりしていたが、成る程、専用チャンネルにしろ其のような道具を持っているのであればあの反応は頷ける」


 そもそも、離れて通話が出来る装置と言うものが出た時点でもう少し驚くのが普通のリアクションだろう。ミシェルはさほど驚かず、反応を示したのは相手を指定しての通話が可能という部分だった。 


 つまり、ミシェルが持っている道具はどういう仕組みかはわからないが、ルナーサ、もしくはフォレムにいる仲間とのみやりとりができる通信機。


 そしてインカムから飛んでくる映像にチラチラと映っていた蛇の腕輪。


 女性がつけるにしてはやや厳ついデザインのあの腕輪こそが通信機なのだろうと推測される。


 腕につけた通信機でやりとりーってお約束だしね。


「しかし超長距離通話か。その仕組があれば旅に出てもリックやジンとやり取りが出来るようになるし、色々助かりそうだよな」


『そうですね、依頼が終わった後にダメ元で聞いてみましょうか?……商人相手となると安くは済まないでしょうけれども…』



 暫くするとミシェルが戻ってきた。


 マシューハウスには向かわず、こちらに歩いてくる。むむ、起きているのがバレたかな?レニー達には自動防衛システムを起動して敵が来るまで寝ていると適当なことを言っておいたのだが……。


 足元まで来たミシェルはじっと俺の顔を見つめる。俺が人間だったら変な汗がダラダラと流れていたことだろう。


 やがてニッコリと微笑むとペコリとお辞儀をし、マシューハウスに入って行った。


「…お辞儀?この世界のあの動作はどういう意味があるのだろう?」


『レニーがリックにペコペコしながら謝ってましたから、恐らくその通りの意味かと』


「にしてもお辞儀?なんでお辞儀?」


『仲間が疑って居るのですよ?ミシェルとしては思うところがあったのでしょう。』


「なるほどね、いい子だな……。どうなるかわからんが、護ってやろうな」

 

『ええ、レニーやマシューともすっかり仲良くなったようですし、必ず護りましょう……」


 

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