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小さな参謀

「野良猫とかの治療をしたら?」

「…………えっ」

 その考えはなかった。

 そのことに気付かされて、私はその言葉の主を凝視する。


「お姉さん、ありがとうね!!」

「あ……あの時の…」

 不治の病に冒された猫を治療してあげた数日後。

 私は再び同じ場所で、あの口の悪い男の子に出会った。

「ここで待ってたら会えるかなって」

「そ、そうなの……」

 口の悪い男の子──改めて名前を教えてくれたけど、土屋大樹くん(10歳)らしいです──は、飼い猫のミルちゃんの礼をしたくて、あれからずっと私のことを探していたらしい。

 探していた……と言っても、まるで当てがないので、最初に出会った場所で、同じくらいの時間に居れば遭遇する確率は高いと考え、待っていたみたいなんだけど…なかなか頭がいい子だな??

「あれから病院で診察して貰ったらさ、ミル、完全に健康体になってたみたいで。猫の先生が目を白黒させてたよ!!」

 場所を近くの公園に移してベンチへ座り、自販機で買った缶ジュースを飲みながら話していると、大樹君はおかしそうに思い出し笑いしながら、あの日の後日談をそう話してくれた。

「あ、お姉さんのことは話してないからね」

「あ、ありがとう」

 実はあの日、別れ際に、私は私の『おまじない』については他人に言わないで、と彼に口止めをお願いしておいたのだ。相手が子供だから、ダメもとではあったんだけど。大樹君はきちんとその約束を守ってくれたらしい。口は悪いが、良い子なんだな。うん。

「おかげでミルは超元気!!お姉さんのおかげだよ!!」

「そっか。うん。良かった」

 ニコニコと嬉しそうな大樹君の様子を見てると、私も嬉しくなってしまった。


 大聖女をやっていた頃から、私は人々の喜ぶ姿を見るのが好きだった。

 困っている人を救えるなら、どんな苦労も苦とは感じなかったけれど。

 なにより人々の笑顔を見ることが、私の一番の幸せであったから。


「それにしても、お姉さん…どうしてあんな力を持ってるの?」

「え……ええと~」

 大樹君はごもっともな疑問に頭を傾げた。私は説明に困って口籠る。

 実は前世で大聖女やってました!!なんて、言っても信じて貰えないだろうし、これはどうしたもんだか。

 適当な返事を思いつかずに、うーんと頭を悩ましていると、

「実は前世で聖女だったとか!?」

「……………は?」

 そのものずばりな発言に、私は固まってしまっていた。


 現代っ子舐めてた。


「えっ、半分冗談だったんだけど……ホントだったんだ?」

「えっと……し、信じてくれるの??」

 その後、私はダメもとで自分のことを大樹君にすべて伝えてみた。すると彼は馬鹿にするでもなく、真剣な様子で私の話を最後まで聞いてくれ、そのうえ、納得したように頷いて信じてくれたのだ。

 まさかこんな夢みたいな話、信じてくれるとは思わなかった。

「だって実際にお姉さんの凄い力みちゃったし。それに、そうでもないと説明つかなくない?」

「そ…そっか……なるほど」

 うーん。そんなもんなのかな~??

 ていうか凄いよね。この理解力??っていうか感受性??


 頭の固い大人じゃ絶対理解不能なことも、柔軟に受け止めてしまう子供の感性。


「あ、でもこれはその…秘密で…」

「わかってる。こんなこと、知られたら大変だもんね」

 大樹君はびしっと親指を立てると、絶対に口外しないと誓ってくれた。

「でもなんか俺にも手伝えることがあったら言ってよ」

「あ…ありがと」

 なんでも協力するから。そう言って大樹君はニカっと笑った。

私はちょっぴり嬉しくなって微笑んだのだった。 

 

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