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寝る前にスマホを見るな

「大丈夫か、ティキ」

 ユウは食堂からティキを連れ出し、割り当てられた客室に連れて来ていた。

「……う、うん……」

 ティキは笑顔を作るが、若干疲れのようなものが見える。あんなに大勢の大人たちに話しかけられたこともそこまでなかったため、緊張や気疲れをしたといったところであろうか。

「とりあえず歯を磨いてさっさと寝ちまいな。お楽しみは明日らしいし、一緒にお父さんの墓参りも済ませられるみたいだ。だから今のうちに身体をしっかり休めとけ」

 ユウに言われてティキは素直に頷く。

「じゃあ、俺ももう寝るからな。おやすみ」

 ユウはそう言うと、軽く手を挙げてから背後のドアノブに手をかける。

「おやすみなさい」

 そんなユウにティキも挨拶を返した。それを聞いたユウは部屋の外へと出ていった。


「ティキの様子は大丈夫か?」

 部屋から出るとアネッサが声をかけてきた。どうやら、ユウがティキを客室に連れて行ったのを見て、心配になって後を追いかけてきたらしい。

「心配ないですよ。ちょっとなれない事態に気疲れしたみたいです」

「なるほど……」

 ユウの返答にアネッサは胸をなでおろす。

「彼に何かあってはエミリアに合わす顔が無いからな。君がフォローを入れてくれて助かった」

 アネッサはそう言ってユウに頭を下げる。

「いやいやいや!そんな大したことしてないですから!」

 ユウは恐縮しつつ、アネッサに頭を上げるよう促す。

「それにしても……ティキの父親は随分この村では有名なんですね」

「この村で墓守になるものは騎士団の関係者が多いからな。その中にはバルト―将軍と縁のある者も多いのだ」

「なるほど。修行に来るものも、村を営む人も国を守るために戦う戦士達なわけですね」

 アネッサは頷く。

「そして、バルト―将軍の武勇は国を超えて轟いていた。その子息ともなれば……な」

 どうやら自身がこの世界に来て最初に出会った人間は、思ったよりとんでもない人物だったことをいまさらながらユウは認識する。

(まさか狙って引き合わせたわけではないですよね?)

 ユウは思わずルティシアに問うが、彼女は否定する。

(そういうわけではなかったんですけどね、まさかこうなるとは。ユウさんの元居た世界のことわざでいうところの犬も歩けば棒にあたるって感じですかね?)

(なるほど)

 自ら遣わした転生人と、神にも匹敵する力をもった存在を犬呼ばわりするのは問題ないのだろうかと一瞬思いもしたが、面倒くさくなったユウはそれ以上、何も言わないことにした。

「どうかしたか、ユウ?」

 ルティシアとやり取りをしているユウの様子はアネッサから見れば、自身の説明を基に何かを考え込んでいるかのように見えた。

「ああ、いや……。そんな彼らが、バルト―将軍に目にもの見せるって……一体全体明日は何があるのやらと思いまして」

 ユウに問われてアネッサは肩をすくめる。

「さてな……。まあ、明日になればすべてわかるらしいからな。我々も寝て、明日に備えた方がいいかもしれないな」

「それもそうですね」

 アネッサの提案にユウは同意する。

「うむ、それじゃあ話はここまでとしよう。おやすみ」

「ええ、おやすみなさい」

 互いに挨拶をすますと、二人はそれぞれ割り当てられた自室へと入っていった。


「……ふう」

 自室に入ったユウは一人息を吐く。チートじみた体力をしているとはいえ、一日大荷物を抱えて山道を歩いたことで流石に疲労が蓄積したのだろうか。

(お疲れ様です、ユウさん)

 そんなユウをルティシアが労う。

(いくら私と融合しているとはいえ、流石に今日は疲れただろう。よく頑張った)

 エクスもルティシアに同調する。

(……)

 至極真っ当な発言なはずなのに、常識的な労われ方を二人にされて、ユウは何とも落ち着かない気分になる。

(……なんか失礼なこと考えてますね……)

(イエ、ソンナコトナイデスヨ!)

 ルティシアもため息を漏らす。

(まあいいでしょう。とりあえずユウさんも明日に備えて早めに寝るのが良いと思いますよ)

(そうですね……)

 ユウはルティシアの言葉に同意すると、洗面所へと向かう。

「さてさて……明日はどうなることやら」

 一人そう呟くと、ユウは就寝前の歯磨きに着手するのだった。

(……おお、ティキ君に言ったことはちゃんと自分でも守るんですね!)

(俺結構いい歳なんだけどな……)

 アネッサのまるで子供を褒めるかのようなコメントに、ユウは肩の力がさらにがっくりと抜けるのを感じていた。


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