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第115話  実家に帰ろう! その6



「ネピアはここで漫画読んだりしてるのか?」

「うん。森の中で読むのが一番好きなの」

「そうか。そうだよな。気持ちいいよな」

「うん。それとね。その…… 魔法式を考えてそれを試したりしてるのよ……」

「ネピアの魔法は凄いからな」

「そんな事ないよ」

「でも俺が頼んだ事はすぐに出来たよな?」

「それは魔法式を組んだ事があるから。した事がない事は出来ないよ」

「そうなのか。じゃあここで生まれた魔法なんだよな」

「うん」


 故郷がなせる技なのか、言い合いする事も取っ組み合う事もせず、ネピアの事を自然に聞ける社会派紳士がここにいた。


「なんでも組めるモンなのか魔法式ってのは?」

「自身が考えつくのならなんでも出来るわ。もちろん正しくなければ起動しないけどね」

「少しずつ組み立てていくような感じなのか?」

「そうね。そういった時もあるわ。あとは一部分ずつ組み上げていって、最後にまとめたり、やり方はその者の考えによって変わるね」

「魔法式は勝手に変えれるのか?」

「基本はあるんだけど、エルフの数だけ魔法式があるようなイメージでいいわ。その者の個性や性格で多少変わるのよ」

「なるほど」


『ネッピーいる~?』


「ん? クリちゃんか?」

「そうみたいね。行きましょう」

「よし」

「クリちゃ~ん! 今行くね~」


『は~い』


「あ、ズーキさんも一緒にいたんですね」

「あれ? ラヴ姉さんは?」

「家で寝てますよ」

「ラヴ姉は自由ね……」

「流石はラヴ姉さん……」

「あはは。けどラヴらしくて好きだな私は」

「「 !? 」」


(やっぱり素質アリだな)


「……」

「……」

「どうしたの?」

「い、いや。じゃあクリちゃんのご両親に挨拶に行こうかな」

「そうね。エルモアを呼んで一緒に行きましょう」

「あ~ それがね~ 急病人が出てね両親とも出かけちゃったんだ」

「じゃあ今日は戻らないかもね」

「そうなんだよ」

「クリちゃんのご両親は医者なのか?」

「違いますよ」

「違うわ」

「え? でも急病人を助けにいったんじゃ……」

「ポンよ」

「ポン…… あぁ……そうか二日酔いの薬か……」

「我が家に伝わる、我が家にしかない薬というか豆ですからね。たまに重度の二日酔いや、急性アルコール中毒などで出張する時があるんですよ」

「戻らないって事は遠いのか?」

「治るんだから宴再開でしょ」

「そうか…… しかも、その宴を再度盛り上げる事に成功する立役者だもんな……」

「多分帰ってきても遅い時間か、下手すると泊まってくるかもしれません」

「なら挨拶は明日にしよう」

「すいません。助かります」

「一旦エルモアの所に行きましょう」

「そうだな」

「うん」


 クリちゃん実家で一人爆睡こいているだろうラヴ姉さんを、多少羨ましく感じるものの、この場所で感じ取れた様々な事柄を思い出し、寝ているだけでは手に入らない事を知る。


「エルちゃ~ん」

「クリちゃん。あれ? ラヴさんは?」

「寝てるよ。家で」

「疲れてるのかな。夕食には誘いたいけど大丈夫そう?」

「誘われなかったら悲しむと思う。食事とお酒が頂けなかったって」

「……間違いないな」

「……無理矢理起こしても大丈夫そうね」

「それにキノコ楽しみにしてたから。ここで成長するって言ってたし」

「成長って……?」

「相当食べる気だよラヴは……」

「そのままの意味か……」

「キノコの里にあるキノコには、成長を促進するキノコもあるのよ」

「へぇ~ (チラリ)」


(これ程に説得力のない商品説明も悲しいものがあるな…… しかし気がつかれないようにしないと……)


「……」

「……」

「……」


(三匹から無言のプレッシャーが……)


「……そう言えば私はもう成長しないんだった」

「クリちゃん……」

「でも…… 本当かどうかは……」

「ううん。しょうがないよ…… うぅ……」

「クリちゃん待ってくれ」

「なんでしょうか?」

「身長に関しては俺は分からない。けれど他にも成長する所はある! 諦めるな!」

「他……ですか……?」

「色々あるもんさ」

「はぁ」

「……」

「……淫獣」

「……お前こそスケベエルフじゃないのか? 俺は精神の成長を考えていたんだぞ?」

「……嘘ね」

「……俺が嘘だろうが本当だろうが、ベースケエルフがスケベ思考したのは事実」

「なっ!?」

「大体どうしてキノコの里にいてキノコ尽くしの食事をしてきただろうに、こんなにちんちくりんなんだよ。クリちゃんと同い年なんだろ? クリちゃんは成長してネピアは縮んじゃったのか? それともそういった毒キノコでも食べちゃったの?」

「あんたぁー!? いい度胸してるじゃないっ!? その毒キノコの毒だけ抽出して脳にブチ込んであげるわ!」

「はっ! 毒をもって毒を制す。それはネピア嬢のお身体に打ち込んだ方がよろしいのでは?」

「……」

「……」

「……ふん。平行線のようね」

「……そのようだな」


 俺とネピアは互いに距離を取る。相手から視線を外さないように横へとジリジリ移動する。先に動くか、それとも相手の出方を見るか。だがその選択肢を選ぶ事なく、この件は終了する。


「あれ? ネッピーとエルちゃんはズーキさんに教えてないの?」

「……」

「……」

「意外に秘密主義だね…… エルちゃんとネッピーは」

「……」

「……」

「秘密主義? 教えてない?」

「あ~ それはエルちゃんとネッピーから聞いて下さい。二人の身体の事ですから」

「からだ?」

「……姉さんタローに話すよ?」

「……うん」

「クリちゃんも姉さんも私が話し終わるまで聞いていてね」

「……分かったよ」

「……うん」


(なんだよ…… なんだか真剣そうな話だな…… 身体の事って…… エルモアとネピアの小さい身体に理由があるのか……?)


「おほん。それでは耳の穴かっぽじって良く聞きなさい」

「あ、あぁ……」


 そう宣言してからどれだけの時間が経ったのだろうか。実際はすぐに話し始めたのかもしれない。だがその後の言葉が衝撃的過ぎてしまって、脳が誤作動を起こしてそう感じてしまったのかもしれない。


「私たち…… エルモア姉さんとこの私ネピアはね……」

「(ゴクン)」

「……」

「……」



(なんだ…… いったい…… なんだというんだ……?)



「完全自立型高機動戦闘幼兵」

「え……?」

「そう。私たち姉妹は作られた存在なの」











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