第116話 実家に帰ろう! その7
「私たち…… エルモア姉さんとこの私ネピアはね……」
「(ゴクン)」
「……」
「……」
(なんだ…… いったい…… なんだというんだ……?)
「完全自立型高機動戦闘幼兵」
「え……?」
「そう。私たち姉妹は作られた存在なの」
(え……? 作られた……? 存在……?)
「用途は主に不正規戦を想定して製作されているわ」
(完全自立型……? 高機動……? 戦闘幼兵……?)
「第三世代の近代化改修キットをアップグレードパッケージとして追加装備しているから、同じ世代の戦闘幼兵では私たちが抜きん出ているわ。仮想次世代機をシミュレーション交戦しても一定時間は生存出来る可能性を秘めいている」
(不正規戦……? 第三世代……? 近代化改修キット……? アップグレードパッケージ……?)
「……驚いた?」
「い、いや…… そ、そんな…… こと……は……」
全く説得力のない説明は俺も同じだった。驚きを隠す事も出来ず、言葉にも出てしまう。まさか彼女達が作られた存在だったなんて夢にも思わなかったからだ。
(だからっ どうしたってんだっ!? 作られた存在っ!? それで今までの関係性が消えるのかよっ!?)
俺は恥じるように、そして弾けるように心の中で感情を爆発させる。悔しかった。一度でもそんな事を考えてしまった自分が。そして彼女達を……ネピアに「驚いた?」なんて言わせてしまった事を。
「(なんの話をしてるのネピア?)」
「(ん? アドリード王国、忘却の村にいたヨヘイじいちゃん覚えてる?)」
「(覚えてるよ。荷車くれた人でザンさん紹介してくれた人)」
「(そう。そのヨヘイじいちゃんと朝までSF小説について熱く語ってたんだけど……)」
「(へぇ~ ネッピーと熱く話せるなんて凄い。いっぱい本を読んでる人なんだね~)」
「(そうなのよ。凄いSF小説に詳しくて私も舌を巻くくらいだったんだけど、そのヨヘイじいちゃんが引くくらい熱く語ったのが……)」
「(タロさん……?)」
「(ズーキさん……?)」
「(なんでも異世界の荷車の設定知識は半端なかったみたいなのよ。出てくる言葉も多いだけでなく、つじつまが合っていたらしいのよ)」
「(じゃあタロさんもSF小説が好きなのかな?)」
「(好きとか言うレベルじゃないわね。聞いたところ変態よ変態)」
「(ズーキさんって小説好きなんだね~ 漫画の方が好きそうな印象だったよ)」
「(だから、付き合ってやったのよ。あいつのSF小説好きにね。それほどに好きなSF小説の話をしてやれば多少は私に敬意を表してくれるかもしれない。それに私たちの身体の事を秘密にしていた事も悪いと思ったからね。まぁ後でちゃんと説明するけど)」
「(そうだね。私たちから話してみてもよかったよね。いっぱいお世話になってるし)」
「(そっ だからあいつの趣味に付き合ってやったって訳ね)」
「(優しぃ~ ネッピ~)」
「(ち、違っ)」
俺は情けないを通り越して、下らなく愚かな生き物だと痛感する。現に彼女達は身を潜め合ってこちらを伺っている。それはそうだ。俺がしっかり意思をもって対応していれば彼女達が不安に思う事もなかった。
(よし! いつも通りだ! 社会派紳士! 何か会話の糸口を………そうかっ!?)
彼女達ネピアとエルモアは作られた存在。いわゆる機械生命体である可能性がある。何故なら今までのようなファンタジーなお話ではなく、科学的な話に聞こえたからだ。
(ふふふ。こういった場合は言葉だけでなく、身体ごと近づけてやるんだ。俺は機械生命体だって何も関係ないんだって所を見せてやる)
機械生命体であれば必ず外部接続出来るコネクタが存在する。主に首後ろ。そしてその接続部の規格がどうしても知りたかった。それを理由にネピアとの距離感を戻す。
(USB接続だったらある意味凄いな…… まさかのRCAピン……?)
「ネピア」
「理解してくれた?」
「あぁ」
「それでも私たちと一緒にいれるの?」
「あぁ」
「そっ ならいいわ」
「一つだけ確認したい事がある。俺がネピアに求めるのはそれだけだ」
「なぁに」
「……穴を見せてくれ」
「え?」
「……穴」
「え?」
「穴」
「え?」
「穴だよ。開いているだろう? 穴が? 分かるだろう?」
「わ、分かるけど……」
「見せてくれ。ネピアの穴を」
「は、鼻?」
「違う」
「み、耳?」
「違う」
「く、口?」
「違う」
「え…… もう……」
「まだあるだろう? ネピアの穴が?」
「え…… 他は…… だって……」
「心配するな。そういった部分は敏感な所だし、清潔にするよ」
「なはっ!?」
(駄目だ…… 多分俺の事を信じられていないんだ…… さっき驚いてしまったから…… なら多少強引にでも……)
「大丈夫…… 全て俺に任せて……ね?」
「なっ!? ちょ、ちょっと!?」
「ネピア…… 優しくするから……な?」
「い、いやっ!? 近づいちゃダメよ!」
「ごめんな。ちょっと触れさてもらうから、ネピアの穴」
「だ、駄目って言ってるでしょ!? ねっ!? ちょっと落ち着いてよ!?」
「分かったよ。じゃあどういった形なのか見せてくれ。それで我慢するから……」
「なななっ!?」
「それも無理なのか? じゃあ言葉で教えてくれ。どうしてもネピアの穴の形が気になるんだ」
「ななななななぁぁぁぁぁぁーーーーーーー!? (バタっ)」
「あっ!? おい!? ネピア!? 大丈夫か!? おい!?」
「……」
「……」
「エルモアっ!? クリちゃん!? ネピアが倒れて!?」
「……」
「……」
「ちょっと!? ネピアを助けようよ!? どうしたのさ!? 早く!?」
「……」
「……」
何時まで経っても俺の近くにやってこない二匹のエルフ。そして俺はまた何かしでかしてしまったんだと気がついた。だが時既に遅いといういつもの流れ。そして何故かエルモアは必死におへその辺りを抑えていた。




