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第109話  寝台列車に乗ろう! その4



「タローが私たちに出会ったのはフルオンが最初。処女航海をしたがっていたバルバーのおっちゃんとアウローズに出会って、精霊の国へ漫画を見に来た。ラヴ姉さんはエルフに好感を持ってる人間って事でいい? そのエルフ耳も付けてるし」

「は~い!」

「そしてフルオンで難癖を付けてきたギャングスタFー13のメンバーにからまれている所を私たちが救った。後は通勤快速マッドスピードの奴らとダウンヒルレースを勝利に導いた人間として私たちの気を引く。そして飲み会から意気投合し一路キノコの里へ向かう事になった」

「いいんじゃないのか? もし俺が一人だったら完全にからまれてそうだしな。ラヴ姉さんいるけど」

「いる~ けどエルフに手を出したりしたくないから、からまれたら困っちゃってたね!」

「じゃあこれでいきましょう。エルモアはどう?」

「いいよ。けどタロさんにもラヴさんにも申し訳ないです」

「いいって。エルモアとネピアには世話になったし」

「タロさん……」

「エルモア……」

「「(ギュッ!!)」」

「……」

「仲良しだね~ エルちゃんとズーキさんが元通りになって本当によかったよ~」

「(うるうる)」


 ラヴ姉さんは話の詳細などどうでもいいのか、俺とエルモアの仲睦まじい姿を見て、いつも通りとろけていた。そしてネピアは微妙な眼差しを俺に向ける。


「確認なんだけど、ネピアの実家には漫画あるのか?」

「あるよ。いっぱい」

「マジで!?」

「マジ」

「本当にいっぱいありますよ。本もいっぱいです」

「なら漫画を見に来た俺の立場は問題ないな。ダウンヒルレースでハンドル握ったのも俺だし」

「車体の改造にヒントをくれたズーキさんの功績もありますしね」

「強度の心配があったけど、それもザンさんの腕のおかげで問題なかったしな」

「あれはいい荷車ですね。今はダンシング愛人形ラヴドールですけど」

「その辺りは事実だから問題ないわね。ちなみにタローがアドリアで見た漫画の続きあるよ」

「マジで!?」

「マジ」

「タロさんも漫画好きですね」

「エルモアは見ないのか?」

「ネピア程ではないですけど見ますよ」

「クリちゃんは?」

「ネッピーに色々見せてもらいましたね」


(すっごい楽しみになってきた……)


「話を脱線させて悪いけど、フルオンの住処には漫画置いてなかったのか?」

「クリちゃん家にいくつか置かせてもらったけど、新しい雑誌ばかりね。フルオンじゃあまり手に入らないから」

「クリちゃんの家? ネピアとエルモアの家じゃなくて?」

「うん。フルオンに来た当初は夜間の襲撃とか、部屋を荒らされたりもしたから、持ち物はほとんど置いてなかったわ」


(抗争かよ…… けど喧嘩をふっかけたのはエルモアとネピアか……)


「じゃあ家はないのか」

「最初は転々としたり野外にいたりしましたね。お外の方が動きやすいですし」

「……そうですか」

「エルっちは野外派!」

「今は?」

「Fー13の皆さんが用意してくれた部屋を借りてます」

「なるほど」

「やたら豪華な所だったから落ち着かなかったけどね」

「そりゃ見てみたかったもんだ」

「どのみちフルオンには戻るからその時にね」

「あいよ」

「ね~ ね~」

「何? ラヴ姉?」

「先に行くのどっちの家かい?」

「場所的には私たちの家になるわね。でもクリちゃんとラヴ姉さんは後で来て貰うようにするわ」

「え~ ズーキくんの両親のご挨拶見たい~」

「ラヴさんに被害が及ばないよう取り計らいます」


(え…… 被害……?)


「ちょ、エルモア? 被害って……?」

「常に最悪の状況を想定して行動する。戦場という現実リアルに倣うだけです」

「あ、あの~? エルモアさん? ちょっと恐くなってきたんですが……」

「あんた今回の件は付き合うって明言したでしょ。地獄まで付き合ってもらうから」

「いやぁーーー!?」


 内容を聞かず惰性や勢いで選択肢を決めると必ず後悔する。その事を身を持って知しらないように本気で願う社会派紳士がここにいた。


「まぁ、そんなに心配する事はないわよ……と思う」

「思うって今言ったよね!?」

「大丈夫だと思いますよ……多分」

「多分って言った!? エルモアさん!?」

「あはは。じゃあ私とラヴは落ち着いたら逢いに行くね」

「クリちゃん!? お見捨て御免確定!?」

「いいな~ 楽しそ~」

「じゃあラヴ姉さん変わってよ!?」

「落ち着きなさい。魔法具が無かったらちょっと困った事になったかもしれないけど、これは安心と言える判断材料よ」

「けどネピア、指定日時を遙かに超えて連絡してないよ」

「……」

「……」

「……最悪は転進ね」

「……そうだね」

「転進って結局は逃げるって事だろ!? オラぁ!? ネピア!? 俺様を被害に巻き込むんじゃねぇ!?」

「むしろあんたがいてくれる事によって、その被害そのものを白紙に戻させる効果を発動出来る」

「……どういう事だ?」

「お母さんは体面を大事にしています。タロさんがいてくれる事によって行動を制限出来ると言う訳です」

「なるほど」

「確定した未来ではないけどね。安心度は上がる」

「さっきからお母様の事ばかり話に出てるが、お父様はどうなんだ? 通常こういった場合はお父様の方が厳しいように感じるんだが。俺の娘に何用だ! なんて怒鳴られそうで……」

「父さんは大丈夫よ」

「お父さんは気にしませんね」


 絶対的な信頼がそこにはあった。これ程までに娘にハッキリと言われた父は嬉しく思うのだろうか。


「優しい方なのか~い?」

「エルちゃんとネッピーのお父さんは優しいよ。もちろんお母さんだって優しい」

「やる事やっていれば母さんも優しいんだけど……」

「そうだね…… 指定された作戦ミッションをこなしていれば問題はない……」

「と、とりあえず、お父様は安心していいんだな?」

「父さんは色々経験してこいって言うくらいで、特に結果云々に関しては何も言ってこないの」

「良くも悪くも行動すれば結果がでる。その結果がどうであれ経験になる。そしてそれを続ける事。お父さんはそう言ってくれます」


(お母様が厳しい、お父様が優しい、と言うよりアメとムチのような役割があるんだろうな。お母様もお父様も変わらず娘の事を大事に思っているんだ)


「大事か……」

「どしたん?」

「どうしました?」

「いや……なんでもないよ」


 俺はふと自分の両親の事を思い出していた。この世界に来た初めの頃は不安からか色々考えたり落ち込んだりする事もあり、元の世界での事を思い出す事も多かった。しかし今ではそういった事も少ない。


「心配する事ないぞエルモア? ネピア?」

「うん?」

「はい」

「せっかく実家に戻るんだ。あまり気負わず行こう」

「……そうね。どう思っても結局戻るんだしね」

「そうですね。不安な事もありますが、楽しみな事もいっぱいありますから」

「ワ・イ・ン! 赤っ! ワ・イ・ン!」

「ラヴはお酒好きだね~」

「うん!」

「今も飲んでるのに、先の事もお酒ってのはラヴ姉さんらしいな」

「飲もう!」

「よし。飲むか」

「ささっどうぞクエルボちゃんです!」

「あ、あぁ……」


 飲むのだろうか。この致死量のクエルボちゃんセットを全て。流石にエルモアでもこれを全て消費出来ないだろうと考えた。そうなるとお鉢が回ってくるのは紛れもなく残された者達となる。











一昨日は失礼しました。以後一日おきになります。

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