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Lost12 優しき青年は、冷酷な魔の王になれるのか  作者: JHST
最終章 優しき青年は―――
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④悠久からの帰還

「成程。これは一本取られた、と言うべきか」

 大魔王が肩を揺らしている。

「しかも、ここまで近付けるまで気配を殺せるようになったらしい」

 そして大魔王は振り返り、右の拳を振り上げた。


 そして相打ち。


 大魔王の拳は背後にいた青年の右頬を確実に捉えていた。だが、頬に当たる瞬間、薄く透明な黒い障壁によって動きを止められる。

 それは大魔王の側も同じであった。大魔王の左頬には同じ障壁が展開し、青年の拳を受け止めていた。

「いよぉ、大魔王。()()()は、よくも見捨ててくれたな。お陰で、随分と長い旅になったぜ」

「旅とは楽しいものだそうだ。それはそれは、貴様の何百年の旅はさぞかし楽しかったのだろう。また余に、感謝してもらってもよいくらいだ」

「はっ、言っとけ」

 互いに右手を降ろし、二人は肩を叩き合い、笑い始めた。

 だが、どこか感情が別の方向に存在しているようであった。


「ま、魔王様………おおぉ、また、その御姿を見られるとは」

 シュタインの目が大きくなる。

「はい。皆、無事に帰ってきましたよ」

 コルティが微笑む横で、相田と大魔王は左手で殴り合っていた。

 互いに意表を突こうと思ったのか、黒い障壁は発生せず、逆の頬がお互いの頬にめり込む。

 そして、合い反する岩壁に叩き付けられた。


 階段からケリケラが降りて来るなり、壁に背中を預けている魔王と大魔王の姿を見て、全てを察する。

「本当にやってる。どうして、こんな事しか出来ないのかなぁ?」

「まぁまぁ、御主人様もずっとこうしたかったらしいですから」

 会ったら、まず一発かますと宣言していた事を実行しただけにすぎないと、コルティが笑う。

 壁に寄りかかっていた二人が、肩を揺らしてまだ笑っていた。

「まったく二人共似た者同士………本当に不器用なんですから」

「えぇ………二人が喧嘩したら、この辺一帯何も残らないんだけれど」

 いいのかな、とケリケラがとりあえず乾いた笑みで済ませておく。


「いいんですよ。私達はこれで」

 長い時を経て得て来たもの。大魔王が未だ経験していない時の流れが始まっていると、コルティは確信する。会社(カンパニー)という未知の組織とも、これから戦わなければならない事、人間と亜人達の共存を目指していかなければならない事、そのどれもが、苦しく困難な道である事を誰もが理解していた。

 だが、今はこれで良いと改めて自分に頷いてみせた。

「御主人様ならば、必ずや、やり遂げてくれる事でしょう」

 大魔王が立ち上がり、遅れて相田も立ち上がる。だが、彼は膝に来ているのか、うまく立ち上がれていなかった。

「もう、しょうがない人達ですね。ほら、二人共、そろそろいい加減にして下さい!」



Lost12 —完ー


そして、歴史は次の失われた時代(Lost13)を刻む

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