③いってらっしゃいから、お帰りまで
「………行ってしまわれましたな」
同じ言葉だったが、シュタインは腰に手を置き、洞窟の壁面を寂しく眺め続ける。何もしていないはずだったが、心身は疲労に包まれていた。
王だけでなく、親しい友人も同時に喪失してしまった心の空白が、彼の体を冷やしていった。
だが前を向かなければならない。急に静かになってしまった広い空間の中で、シュタインはそう決断した。
「さてさて、こちらはこちらでやる事をやらなければ」
石床に寝かされていうリコルに視線を落とす。短い時間の治療だったが、コルティは的確に重症部分のみの応急処置を終えているようで、出血は既に止まっていた。
だが安心も出来ない。一体どんな攻撃を受ければ、ここまで酷い壊れ方をするのか。
「まずは彼を、治療室まで運びましょう」
彼の背中と石床の間に手を入れる。
これが意外と重い。
「あ、手伝います!」
そこへ、一人の女性が申し出て来た。
「これはこれは、ご丁寧に―――」
シュタインが感心すると顔を上げ、そして固まった。
「こ………コ、コ」
「こここ? 大丈夫ですか、シュタイン殿」
猫亜人族の女性が首を傾げる。
「コルティ殿?」
「は、はい………そうですが」
そこには変わらぬ姿のコルティがあった。
シュタインは大魔王と彼女を交互に見ながら、完全に思考が停止していた。
「いや、さっき出発されたばかりで!? いや、一度行かれたら、もう二度と—――」
王国建国から今日まで、一体何百年あるというのか。帰路の呪法もなく、どうやってここまで戻って来られるのか。それとも呪法が失敗したのか、あらゆる可能性がそのまま浮かんだままになっていた。




