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Lost12 優しき青年は、冷酷な魔の王になれるのか  作者: JHST
最終章 優しき青年は―――
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③いってらっしゃいから、お帰りまで

「………行ってしまわれましたな」

 同じ言葉だったが、シュタインは腰に手を置き、洞窟の壁面を寂しく眺め続ける。何もしていないはずだったが、心身は疲労に包まれていた。

 王だけでなく、親しい友人も同時に喪失してしまった心の空白が、彼の体を冷やしていった。

 だが前を向かなければならない。急に静かになってしまった広い空間の中で、シュタインはそう決断した。


「さてさて、こちらはこちらでやる事をやらなければ」

 石床に寝かされていうリコルに視線を落とす。短い時間の治療だったが、コルティは的確に重症部分のみの応急処置を終えているようで、出血は既に止まっていた。

 だが安心も出来ない。一体どんな攻撃を受ければ、ここまで酷い壊れ方をするのか。

「まずは彼を、治療室まで運びましょう」

 彼の背中と石床の間に手を入れる。

 これが意外と重い。

「あ、手伝います!」

 そこへ、一人の女性が申し出て来た。

「これはこれは、ご丁寧に―――」

 シュタインが感心すると顔を上げ、そして固まった。


「こ………コ、コ」

「こここ? 大丈夫ですか、シュタイン殿」

 猫亜人族(バステト)の女性が首を傾げる。

「コルティ殿?」

「は、はい………そうですが」

 そこには変わらぬ姿のコルティがあった。

 シュタインは大魔王と彼女を交互に見ながら、完全に思考が停止していた。

「いや、さっき出発されたばかりで!? いや、一度行かれたら、もう二度と—――」

 王国建国から今日まで、一体何百年あるというのか。帰路の呪法もなく、どうやってここまで戻って来られるのか。それとも呪法が失敗したのか、あらゆる可能性がそのまま浮かんだままになっていた。

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