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Lost12 優しき青年は、冷酷な魔の王になれるのか  作者: JHST
最終章 優しき青年は―――
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①優しき青年に物申す

 シュタインの足元へと落ちた人間。それは、紛れもなくリコルだった。彼は、全身砕けた鎧を纏い、金属の亀裂から大量の赤い線を引いている。

「え、いやだって………さっき、出発したばかりじゃ!」

「ケリケラ! それよりも治療を!」

 コルティが即座に駆け寄り、治療を始めた。

 まるで巨人に握りつぶされたかのような怪我だが、彼の眉はまだ動いており、その心臓が止まっていない事を示している。

 淡い緑の粒子がコルティの両手から放たれ、特に怪我の酷い上半身へと集めていく。

「まさか、失敗!?」

 ケリケラが残り僅かな魔力で増幅(ブースト)をかけ、コルティを支援し始める。


「いや、そうではない」

 大魔王が時空溝とリコルを交互に見て、失敗ではない事を否定する。

「コルティ殿、恐らく彼は我々と別れてから、かなりの時間が経っているかと」

 シュタインが、彼の髪の長さが変わっている事や、装備していた物が異なる事からそう結論付けた。

 大魔王もそれに頷き、状況の把握に努める。

「この呪法が発動出来るのは、余の友のみ。そして一人しか帰れない。そして帰って来た者が、瀕死の元勇者………さて、この状況から何を導くか」

 間違いなくリコルは目的の人物と接触し、送られるまで目の前にいた。そして彼が瀕死になる程の戦いが起きた。この時、大魔王達が知る者がとる行動とは何か。


「御主人様は、相変わらずという事ですな」

 シュタインが肩を小刻みに揺らし、目じりに涙を浮かべていた。

「大魔王様」

 治療しながら、コルティがこの場で最強の人物の名を呼ぶ。

「今発動している時空溝にさらに時空溝を重ねる事は出来ますか?」

「………可能だ。だが、残りの魔力ではあと一度が限界だ」

 大魔王も先が読め、呆れ始めた。

「じゃぁ、ボクが増幅すればさらに安定するよね!」

「………理論上はそうだ」

 さらに大魔王が呆れる。


「シュタイン殿、後の治療をお願いします」

 コルティが魔法を解き、立ち上がった。

 シュタインが肩をすくめ、仕方がないと引き継ぐ。

「やれやれ………お願いですから、魔王様には手加減をお願いします」

「さぁ、それはお約束できないかもしれません」

 彼女は笑って振り返るが、その表情は引きつっていた。

「いくらお優しいとはいえ、私達の心配を無に帰すような振る舞いには、直接お話ししないと分かってくれなさそうなので」

「本当、それ! もう怒ったんだから!」

 ケリケラも自身の感情を表情に乗せている。

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