⑥使用方法は口頭で
大魔王の両手から粒子が霧散し、その腕が下ろされると同人、コルティとケリケラの二人はその場に座り込んだ。
「できたのか?」
リコルが大魔王に問いかける。
「うむ」
宙に浮いた球体を手に取り、大魔王が手首を返しながら異なる角度から覗き込む。ガラスのような球体は最初に見せられた状態と大して変わらぬ姿だが、生物的な本能が簡単に触れてはならないものである事を、無条件に訴えていた。
「持っておけ」
「ちょっ! おまっ!」
まるでお菓子のように、大魔王がリコルに向かって無造作に近い形で球体を投げる。
余りにも予想外の行動にリコルは一瞬慌てたが、放物線を描いて落ちてくる球体の落下位置を微調整しながら体を揺らし、胸元で包み込むように受け止めた。
「お前っ! お、落としたら洒落にならないだろうが!」
「まぁ、割れて呪法が発動しても、ここに戻って来るだけですがね」
シュタインの言葉にリコルの劇情が一瞬で冷め、互いに目を合わせる。
「冗談だよな?」
「はい。そのつもりで言ってみたのですが」
伝わらなかったでしょうか、とシュタインが苦笑で首を傾げる。
「お願いですから、本当に落とさないでくださいね」
膝に手をつきながら立ち上がったコルティが、額の汗を拭いながら口の中に溜めた息を吐き出すと、半ば呆れながらリコル達に声を投げる。
「ホント。落としたら………刻むよ?」
座り込んだままのケリケラも、息を切らしながら乾いた笑いを見せる。
「………あぁ。分かってるよ」
球体を握るリコルの手に力が籠る。
そして指の隙間から見える球体に視線を落とす。
「そう心配するな。簡単に割れるものなら持ち運べまい。特定の人間が魔力を込めて投げなければ割れない仕様にしてある」
知らない誰かがこの時代に来ても困るだろうと、大魔王が当然の処置だと自慢気に話した。
「………早く言え」
リコルの無駄な力が一気に削ぎ落される。
「これで、残る問題は一つだけですな」
コルティとケリケラの状態を確認したシュタインが顎を触り、静かに佇む大魔王の行動の次を待った。
「では、大魔王様」
「うむ」
続いて大魔王は青白い洞窟の壁面に向かうと、右手を左から払うように伸ばし、複数の黒い魔法陣を同時に展開させる。大小様々な魔法陣は互いに手を結ぶように黒紫の魔力線が伸びていき、やがて有機的な結合から巨大な1つの魔法陣へと形を成した。




