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⑤奇跡の産物

 次にケリケラの名前が呼ばれた。

「余が球体に呪法をかけている間、余達の力を増幅させよ」

「えぇ!? 二人同時にっ!」

 それは、ケリケラにとって初めての試みであった。

「早くしろ。失敗すれば、会えなくなるぞ?」

「ぐむむむぅ! んもぉ! 次からは先に言っておいてよねっ!」

 歯を噛み合わせたケリケラは翼を左右に広げ、半ばやけくそ気味に自身の魔力を全力で解放する。そして大魔王とコルティの足元に翠色の魔方陣を展開させると、二人が放っていた魔力が即座に倍加された。

「長くは()たないよっ」

「問題ない」


 魔法陣を展開し、大魔王もコルティ達も身動きせずに手を伸ばしている。一見地味な光景に見えるが、魔法を知る者からすれば、一切のミスも許されない恐ろしい程に精密な作業を行っていた。

 静かに直立するしかできないシュタインが息を飲む。

「成程………球体の大きさに収まらない呪法量を、コルティ殿の開いた空間に無理矢理詰め込ませるのですな」

 シュタインの頷く横で、リコルも一筋の汗を洞窟に落とす。

「解説する方は楽かもしれないが………こいつらのやってる事は、握り拳程の大きさの中に、街を一つ詰め込んでいるようなもんだ。理解するのも馬鹿馬鹿しいくらいな、非常識よりも外の世界さ」

 呆れるリコルを前に、球体の中では次々と呪法が刻まれては、球体の中心の空間に吸い込まれていく。コルティもケリケラも無言のまま表情を強張らせ、一切の集中力が乱れないよう自らの世界を維持させた。


「もう少しだ」

 大魔王の表情に一切の変化はないが、大魔王が放出している魔力量は、既に並みの魔法使い数人が一生に消費する分の魔力を越えている。

 ガラスの球体の表面が黒い光の薄膜に包まれると、今度は月の満ち欠けの様に球体の一部が黒い膜で覆われ、そしてすぐに晴れていく。

 コルティとケリケラの表情に余裕がなくなっていく。

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