④帰路の呪法
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三時間後。
コルティ達は各々の覚悟の元、大魔王が指示した里の地下へと向かった。そして、目の前に広がる青暗い洞窟へと辿り着く。
「これは随分と………広い空間ですね」
壁、床、天井の中に含まれる鉱石が青白く発光し、等間隔で設置された魔導ランプと合わさって数メートル上の天井まで眺める事が出来た。
先頭を歩いていたシュタインが、コルティ達に体を向ける。
「ここは、会社の物資集積所だった場所です。洞窟は非常に入り組んでいますが、正しい経路で数時間も歩けば、ゲンテ近郊にある森の洞窟から出る事が出来ます」
「あぁ、あそこの入口ってここに繋がっていたんだ」
シュタインの説明に、ケリケラの理解が一つ増える。
―――深遠の魔窟。
街の者はこの洞窟を昔から地獄に続く恐ろしい穴であると伝えられ、冒険者であっても、終わりの見えない洞窟と内部に生息する毒を持つ生物を恐れて誰も入ってこない。だが、この道がこの里と外界と繋がる唯一の物理的な道であり、それ以外は大魔王の転移魔法に頼るしかないとシュタインが補足した。
「来たか」
先んじて待っていた大魔王が振り返ると、右手の空間を歪め、ガラス玉に近い結晶を出現させる。
今更覚悟を聞くまでもない。大魔王は、本題へと入った。
「まずは帰還用の呪法が刻まれた結晶体を完成させる」
手の平の球体は、大魔王が手を降ろしてもその場で浮き続けている。やがて意思があるかのように内部の紋様が複数の輪となって回転を始めた。
「大魔王様、私達はどうすれば」
詳細を聞かされていないコルティは胸の前で手を握り、大魔王に問いかける。
「球体の中で空間を生み出し、そのまま位置を固定させろ」
単純な指示ではあったが、物質の中で空間を開いた事は一度もなかった。それでも、彼女は両手を伸ばすと、指定された場所に意識を集中させ、球体の中で空間を開く事に意識を傾ける。
しばらくすると、透明な球体の中心で黒い光が集合体を形成し始めた。
「ふむ。その調子だ」
大魔王が球体を挟むように両手を伸ばし、左右の距離が均等になるような位置で腕を固定する。そして、両手から淡く黒い粒子を生み出していった。




