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①コルティとケリケラ

「コルティ、ボクが行くよ」

 客人用の宿舎に戻って一時間。

 居間で冷えかけているお茶を挟み、無言になって十分。ケリケラがコルティに前振りもなく、下からすくい上げるような面持ちで呟いた。

「………良いのですか? この時代には二度と帰れなくなるんですよ」

 コルティは彼女を凝視こそすれ、決意を静止しなかった。誰かが行かなければならない以上、止め合っても仕方のない事だと理解しているからこその言葉であり、信頼でもあった。

 故に、彼女はケリケラに短く『帰れなくなる』点のみ強調する。

「でも、短い時間だけど向こうではお父さんには独占して会えるんだし、それに………やっぱりコルティにはお父さんと一緒にいて欲しいって思うなぁって」


 精一杯の明るさを含んだケリケラのぎこちない笑みに、コルティは自然な笑みで返した。

「ありがとう、ケリケラ………でも、その理由では私もケリケラも平行線になってしまいますね。私の立場であれば、他の方々よりも御主人様と長く居させていただいた分、貴女にも長く御主人様と一緒に居て欲しいという気持ちがありますから」

 相田との接点の時間が短い新参者が我儘を言う訳にはいかない。言葉では示さなかったが、コルティは彼女の言葉の裏に潜んだ『我慢』の二文字を読み取った。故に、彼女はケリケラに感謝しつつ、それだけでは決して納得できる理由ではないと遠回しで拒否する。


「………でも、どこかで納得しないと、ずっと決まらないよ」

「そう、ですね」

 コルティが苦笑する。

 それもまた事実であった。

 全員が納得できる理由があれば、既に朝の一席で決まっている。

 コルティは、過去に敵対してした人間のリコルを別として、シュタインも自らを犠牲にしてでも名乗り上げるだろうと予測していた。それこそ、自分やケリケラを行かせる訳にはいかない、老い先短い自分が行くべきだと笑って年少者をけむに巻く事は目に見えている。


「他に方法があれば………」

 与えられた条件を覆すだけの条件を考えるも、理想的な答えが見えてこない。コルティもケリケラも、冷めたお茶と交互に溜息をつき、時間だけが唯々過ぎっていくのを悩み続けた。

 その時、扉を叩く音が部屋に響く。

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