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Lost12 優しき青年は、冷酷な魔の王になれるのか  作者: JHST
第八章 あの人と共にありたい
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⑦全てを知る者

「悪いが俺に聞いても、何も知らないぞ。第一、奴が何て言うか知らないが、それが事実かどうかを証明する方法はない」

 むしろ知る以上に、後悔するかもしれない。リコルは、敢えて遠回しにそう告げる。

 コルティは、大魔王に視線を戻すか一瞬迷った。

 真実を知った時、仮に真実でなくとも大魔王の口から望まぬ答えが放たれた時、その内容をどこまで許容出来るのか。彼女はテーブルの下、スカートの上から拳を握り締めた。


「………概ね、貴様達が考えている事は合っている」

 食後の珈琲を傾けながら、大魔王は顔色も声色も変える事なく、いつもと同じ声でコルティとケリケラの疑問に答える。

「合っているって………本当に、私達があの街に来るって知っていたって事?」

 ケリケラが目を大きくさせる。

「そうだ」

「じゃぁ、何だ………俺やシュタインが襲われる事も知ってたっていうのか?」

 軽口のようで、リコルの声が低い。


「そうだ」

「………言い切ったな」

「リコル殿っ! お待ち下され!」

 リコルが不気味な程静かに立ち上がった瞬間、何かを察したシュタインも立ち上がり、彼の肩を掴む。

 テーブルの上の陶器が一斉に音を鳴らし、リコルのカップは横に倒れ、中の珈琲が床へと流れていった。

 視線を合わせる素振りすら見せない無表情な大魔王の変わらぬ声と言葉に、彼は歯を食い縛りながら右手を強く握り締める。

「自分が何を言ったのか分かっているのか? お前は………お前は、妹のマキやフォースィをわざと見捨てた事になるんだぞ」

「リコル殿、落ち着いて下され!」

 徐々に感情を露わにさせていくリコルが、額に血管を浮かばせながら、今にも大魔王に襲い掛からんばかりの様相になった。それでもシュタインが力を強めながら必死に止めようとするが、彼はついに左手でシュタインの手を払いのける。

「聞きたくもない最悪の答えだ。俺は、妹やフォースィの敵を討つ為に、会社(奴等)を潰す為だけに、大魔王(こいつ)に協力してきたんだ………シュタイン、お前は何とも思わないのか?」

 かつては敵同士でありながらも、同じ敵をもつ同志になったという認識。だが実は相手の掌で踊らされていただけだったと知った彼の想いから吐かれる言葉は静かに、しかし凄まじいものがあった。

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