⑥慣れない朝食
「おや、お口に合いませんでしたか?」
翌朝。
シュタインが口に運んでいた野菜を止め、テーブルを囲んでいた周囲を一瞥する。
根菜類を刻んだシチュー、複数の香辛料を振りかけた干し肉のスライス、焼き立てのパンに搾りたてのホットミルク。朝食としては手の込んだ料理がテーブル一杯に、彼の采配によって規則正しく並べられていた。
「いや………そういう意味じゃないんだけどね」
ケリケラが表情に困ったまま、黙々と食べ続ける面々を見渡す。そして最後に、静かに、しかし堂々と食事を続けているコルティに顔を向けた。
「諦めましょう。私は、気にする事を諦めました」
「成程」
割り切った言葉にケリケラが大きく息を吐いた。
彼女は対面する大魔王から順番にシュタイン、そして元勇者のリコル達が普通に食事をしている姿を見比べる。
「うん………成程」
彼女はコルティに倣い、それ以上考える事も、言葉を紡ぐ事も諦めた。
「大魔王様。一つお聞きしてもよろしいでしょうか」
食事が終わり、最後の皿がシュタインによって運ばれていくと、膝の上に置いていたナプキンで口を拭き終えたコルティが、唐突に声をかける。
大魔王は彼女に視線を合わせると、沈黙をもって彼女の問いを許した。
「これから、どうなさるおつもりでしょうか」
一呼吸おいて、話を続ける。
「大魔王様が、御主人様が飛ばされた時代へ行く手段を研究されている事は分かりました。ですが、今回の私達との出会い、そしてこの集落へ案内した事、見透かしたかのようなリコル殿の帰還………この一連の流れが偶然だというには、余りにも順調すぎる違和感を覚えました」
具体的な答えは導けていないが、大魔王は何か必要な物を集めている、そんな気配を感じるとコルティが説く。
「あ、ボクも同じ事を感じてた!」
翼を大袈裟に広げ、ケリケラも同じ主張を唱えた。
「ゲンテの街で情報を集めた時も、大魔王様らしき気配を簡単に感じられたし、全身黒ずくめの人間がいるって情報も街ですぐに手に入ったし………でも、その割には、会社っていう奴等に気付かれないようにしようっていう話と矛盾してるなーって思ったよ」
そして、二人がリコルに視線を向けてみるが、彼は慌てて首を左右に振って肩をすくめた。




