⑤あの時よりも
「誇るがよい。これまで余に傷を与えた貴様は、三人目だ」
薄れゆく意識のコルティの前で、大魔王が満足そうに肩を揺らす。
そして一人で語り始める。
「この時期、貴様の力は余の望む域にまで達していない事が殆どであった。この集落に辿り着けなかった事も三桁を超える。そして、幾百回と貴様と余はここで戦ってきた………勿論、貴様が知る由もないが」
過去へと遡る呪法、それは何も友人に会う為だけに使われてきた訳ではなかった。
「余の魔力………貴様達の空間を操る能力と魔力増幅。余と貴様達の目的を達成させる為には、高度に精錬された技が必要なのだ」
それでも、事を成せた事例は一度たりともなかった。
今回。
大魔王は二人をすぐ傍へと置かず、五年の刻を待つ事によって、二人の能力を飛躍的に向上させる事に成功させる。
コルティの意識は完全に暗闇へと沈んでおり、その事実を聞く事は出来ない。
「初めの余も、貴様と一手交えようとはしなかった。だが、こ先二百年の時を刻み、繰り返してきた事で、貴様の力量を把握する事が、重要な因子になっている事に気付いた」
大魔王が呼吸が落ち着いたコルティを抱きかかえ、彼女達の宿舎へと足を向ける。
「かつての余であれば、ベンチに置いたまま無視していったのだろうが………成程、積み重ねた知識と経験というのも、存外役に立つらしい」
大魔王は宿舎に入ると、コルティを近くにあったソファーへ静かに置く。
「あの娘に気付かれても面倒だ………ここで許すが良い」
そして、コルティの顔を見ると、自嘲し踵を返す。
「あの時の余では、魔剣に貴様達の魂を封じ、その命を長らえるしか方法がなかった。だが。喜ぶがいい………今回は、貴様達が生きている間に、目的が達成出来るであろう」
大魔王はそう呟くと、闇の中へと消えていった。




