④唯一届いた一撃
「………実に懐かしい技だ」
喉を鳴らしながら笑い、大魔王の服とマントの破損が元の姿へと戻っていく。
「服とはいえ、余に傷を与えた事………見事である」
「いえ………私の負けのようです」
大魔王に拳を向けていたコルティが、前のめりに倒れる。
地面に倒れていく彼女の体を、大魔王が右腕で抱くように支えた。
「ただの脳震盪だ。しばらくすれば足に力が戻る」
「は、はい………」
下半身どころか、コルティは両腕にも力が入らず、だらりと下がったままになっている。
彼女が八頸によって自身の魔力を拳から大魔王へと送り込んだ際、大魔王は左手でコルティの頭部の毛に触れていた。その小さな点を通じて大魔王は魔力を送り込み、彼女と同じ技を東部に放っていた。
大魔王の送った魔力は微細であり、コルティの魔力量に遠く及ばなかったが、細い針のように一点に集中させた魔力はコルティの頭部を局所的に大きく揺らし、行動不能へと追い込んでいた。
数分後。
コルティは大魔王の腕から離れ、自身の足で体を支えようと足に力を込める。
「御手数を、おかけ………しました」
震えたままの膝に手を乗せ、崩れそうになる体を維持しようと、必死にバランスを保とうとしていた。
「無理をするな」
「わわっ!」
大魔王が無理矢理コルティを抱え上げると、ベンチへと進み、彼女を横に寝かせる。
「やはり五年の旅は無駄ではなかったようだ。今まで戦ってきた中て、最も余に近付き迫った一戦であった」
以前会った時よりも遥かに強くなっていると、大魔王が満足する。一方のコルティは、彼の声が耳に届いているものの、朧げな目を開けると世界が回転し、吐き気に襲われていた。
故に大魔王を直視する事が出来ない。
「約束は果たす。今は静かに目を瞑っておくがよい」
その声を最後に、コルティの意識が次第に遠ざかっていった。




