⑥飽和
「会社の情報網から逃れつつ、数百年単位で研究を続け、この星の歴史と言う巨大な海の上に浮かぶ、砂よりも小さな点を狙って魔王様と合流しなければなりません。当然ながら、我々の数世代先の者達に全てを託す事になるでしょう」
「だが、奴らは俺達の事を、随分と危険視し始めたようだ」
リコルがお茶の入った湯呑を手に取り、音を立てて啜る。
「当然、奴らに対抗できる力と組織が、こちらにも必要になる」
彼の目は遠くを見定めていた。
ウィンフォス王国とカデリア王国との戦争が、会社によって仕組まれていた事は、既にコルティ達を含めて知られており、その計画を台無しにした相田達を目の敵にしている事は想像に難くない。そして、会社は、彼の様に異世界から来た者が中心となって運営されており、その超人的な能力、時代に合わない超技術によって、この世界を思いのままに変えようとしている。
まるで、御伽噺のような話であった。
「大魔王様が襲撃した洞窟内の物資の中にも、我々ではどう使うのか分からない品々が何点かありましたな」
鹵獲した物資等はこの集落の地下に保管され、しばらくは金銭的にも困る事なく、自給自足の生活ができるとシュタインが湯呑を傾けながら話す。
コルティが大きく息を吐いた。
「流石に、多くを詰め過ぎました」
現状を一通り把握できたコルティは、疲れた表情を見せ始めていた。彼女からしてみれば、五年分の出来事を一気に展開させ、紐付けたのである。話の中は、希望や絶望が入り混じり、自分なりに整理し、解釈するには、一人で考える時間が必要だった。
「確かに、少し話しすぎたようだ」
大魔王が切り出すと、シュタインがその意図に気付き、代わりに話をまとめる。
「………では、今日はこれくらいにして、一先ず解散と致しましょう。お二人の宿舎も、用意できておりますので、ご自由にお使いください。私がご案内します」
この家を出た向かいの一軒家だとシュタインが指さし、最初に立ち上がった。
「俺も二階に戻る。今日は………もう疲れた」
次にリコルが立ち上がり、コルティ達に軽く手を振りながら階段に向かって行く。
「ケリケラ。私達も行きましょう」
「………うん」
歯切れの悪い会話だったが、席を立った二人は、シュタインの案内を受ける事にした。




