④時をかける元勇者
一度放った言葉を止められず、リコルは下を向きながら立て続けに説明を始める。
「あれは、いきなりだった。最後の難民が故郷へと戻り、誰もいなくなった所に奴らは現れ、俺達に襲い掛かってきたんだ」
当然抗ったと彼が呟く。
「だが、俺は手も足も出せずにやられて動けなくなった。マキもフォースィも一緒になって俺達と戦ってくれたが、奴らには敵わなかった。マキが俺の目の前で冷たくなっていく所までは覚えているが………気が付いたら、俺は大魔王に助けられ、知らない天井を見ていたのさ」
マキの最期を見たが、フォースィの行方は今でも分かっていないとリコルは自嘲する。額を抑える指の力が強まり、乾いた笑いを見せる彼の表情は、必死に沸き起こる感情を抑えようとする必死の行為の表れであった。
「奴ら………やはり、これも会社の仕業、ですか」
コルティの問いに、リコルはようやく二人に顔を向けると、顔にしわが集まっていく。
「ああ。一体何様のつもりか知らないが、奴らは自分達を『平和の使者』とか『正義の味方』とかを声高に主張していやがった………まぁ、勇者だった俺があれこれ言う資格はないかもしれないが」
自虐に近い冷たさと復讐に燃える熱さが決して混ざり合う事なくリコルの中で蠢いている。かつては自分がその側にいたが、彼は行使される側になって初めて、その理不尽さを思い知る事になったと再び自嘲した。
そして、今は妹の敵を討つ為、この集落に身を隠しながら、大魔王と共にその機会を窺っているのだという。
「それじゃぁ、さっきのって修行か何か?」
ケリケラが、自分に理解できる範囲で会話に参加すると、リコルは表情を和らげ、少し違うと言って首を振った。
そして、言っていいのかと彼が大魔王に顔を向けると、彼は目を瞑り、小さく頷く。
「あれは時をかける呪法さ………あいつに会う為のな。俺は大魔王が放った呪法に乗って、その成果を報告しているのさ。平たく言えば、哀れな実験台さ」
あいつ。
その言葉に、コルティの瞳が大きくなった。




