③元勇者の帰還
「………リコル、殿?」
コルティの思考力は、そろそろ限界を迎えつつあった。
床が抜けた穴から無傷のリコルが顔を出して飛び上がると、彼も目の前にいた彼女達の姿に気が付く。
「お前達が、何で………そうか、もうそんなに時間が経ったのか」
リコルは体に付いていた土埃を払い落とすと、大魔王に向かって、不満そうに人指し指を突き付けた。
「おい! 今度は戻り過ぎだ。村どころか、人間すらいなかったぞ! 見た事もないような、家よりでかい蜥蜴に一日中ずっと追いかけられていたんだからな!」
「………そうか。それは、ご苦労だった」
大魔王が小さく笑いながら右手をゆっくりと上下に振ると、木材の破片が細かい粒子となって分解され、空気中を漂う粒子は破損した天井や床に集まり、再び木材となって元の状態へと戻っていく。その流れは一分とかからず、何事もなかったかのように居間が元の姿へと戻る。
「………それで?」
リコルが話を噛み合わせようとしない大魔王相手に、疲れた表情を見せながらも腰に手を当てる。そして、どんな顔をしていいのか分からずに困っているコルティ達を見ながらシュタインに話しかけた。
「丁度、リコル殿達が襲われた話からです」
「………成程。随分と都合の悪い流れな所だ」
鼻を鳴らしたリコルは、先程まで大魔王が座っていた椅子に遠慮なく腰かけると足を組み、鼻から大きく空気を吐き出しながら頭を掻き始める。
「………その、襲われたと聞いていましたが。御無事で何よりです」
コルティから先に話を切り出した。
だが、彼はバツの悪そうな表情を崩さない。
「あぁ………正直話したくもないが、そうもいかない。まぁ、座ってくれ。話してしまえば………そう、すぐに終わる話さ」
向かい側の椅子を指さし、リコルが二人に座るよう声をかける。コルティとケリケラは、それに応じるように椅子に座り、額を掴みながら唇を噛みしめる彼の口が開くのを待つ。
ようやく決断したリコルが、二人に視線を合わせないまま目を閉じ、口を開ける。
「妹は………マキは死んだよ」
その一言に、コルティもケリケラも言葉を失った。




