①裏で蠢く者達
「大したもてなしはできませんが………」
シュタインが大魔王や客人のコルティ達を席につかせ、台所へと向かい、茶葉と湯を用意し始める。
家の中は、至って普通の木造家屋。外の景色と比べれば、かなり街中の生活に近い。殆どの家具は木材が用いられ、火を扱う台所では石材が多く使われていた。
「もう五年ですか………早いものです。それにしても、いやぁ、御二人が無事で何よりでした」
久々の再会か、以前よりもシュタインの口数が多い。コルティ達が戸惑っている内に、彼が台所か戻り、大魔王から順にお茶を差し出すと、シュタイン自身が最後に自分の分を手元に置いて、椅子へと腰かけた。
コルティとケリケラが、シュタインと大魔王の顔を交互に見つめている。
「大魔王様、私から説明してもよろしいでしょうか」
シュタインの言葉に、大魔王は静かに頷き、お茶の入った湯呑を口元で傾けた。
コルティとケリケラの視点がシュタインに定まる。シュタインも咳払いをしてから、ゆっくりと説明を始めた。
「まず、私の事ですが、暗殺されそうになった所を大魔王様に助けて頂いた、というのが事の真相です」
それは約四年前。コルティ達が王国を旅立って、一年後の出来事である。
コルティ達がいなくなり、シュタインはウィンフォス王国との交渉を行う委員会の中心人物として、人間との共存について調整役を務めていた。だが、久々の休暇を取って里帰りをしていた途中、人気のない道中で事件は起きたと彼が語る。
「私を殺そうとした者は女性で、顔を隠していた黒い布からは緑色の髪が見えておりました」
暗殺者の女は両手を振り回し、不可視の物体であらゆる物を切断する攻撃を繰り出してきたとシュタインが当時の様子を伝える。そして、成す術もなく瀕死に追い込まれ、全身をなます切りにされて力尽き、倒れた所に、大魔王によって助けられたのだという。
シュタインが次に目を覚ますと、既にこの村の家の中だった。
「後で大魔王様から教えて頂いたのですが、暗殺者は会社と呼ばれる秘密組織の人間だったそうです」
「………会社」
ここにきて、何度も同じ言葉を聞かされる。言葉自体は、この世界において聞きなれない単語だが、コルティは自分の主人を異なる時代へと飛ばした組織であるという認識を既にもっている。そして、自分達とは相いれない存在である事に、薄々気が付き始める。




