⑧洞窟に入ると、そこは不思議な集落だった
「そりゃぁ、ボク達の仲間の中にだってずるい奴も、酷い奴もいるよ。でも人間も同じでしょ?」
ケリケラは自分達だけが悪い存在ではないと口を尖らせるが、大魔王の反応は冷ややかだった。
「人間共が、そう思ってくれれば良いがな」
彼女の意見を正しくもあり、間違っていると評して、大魔王は再び足を進める。その傍を獣人や亜人の子ども達が笑いながら走りすぎ、人間の子どもが負けじと追いかけて行った。
「そう、思って欲しいものです」
子ども達の背中を見つめながら、コルティとケリケラが後に続く。
気が付けば、コルティ達は街の東門を越えて、近くの森の中へと足を踏み入れていた。
「えぇ、まだ歩くの?」
同じ速さと高さを維持しながら飛ぶ事に疲れたケリケラが、音を上げる。
「着いたぞ………ここだ」
大魔王が森の中で足を止めると、そこには巨大な洞窟が口を開けていた。
「洞窟?」
奥から冷たい空気が漏れ出し、コルティ達の火照り始めた足を冷やし始める。だが中は暗く、松明を設置するような壁掛けも見当たらない。
「歩けば最奥まで数時間はかかる洞穴だ。昔は鉱山として動いていたらしいが、既にそれらも枯れ果て、今は毒をもつ生物が多いだけで、街の人間どころか冒険者ですら入ろうとしない」
「………何故、これを私達に?」
コルティは、主人に関わる話だと思っていただけに、その表情に戸惑いが見え始める。
大魔王は二人の表情を見てから、洞窟の奥へと目を向けた。
「ここはかつて、奴らの物資集積所だった跡地だ」
「奴ら?」
ケリケラが首を傾げる。
「………まさか、御主人様を追いやった」
「そうだ」
二年前。
大魔王はこの洞窟に物資を保管していた会社の者達を襲撃したと語る。洞窟内にいた者達の事には触れなかったが、コルティは、話の内容から彼らがもう大地に足を付けてはいないと結論付ける。
「こっちだ」
話を終えた大魔王は、二人を洞窟の入口まで入らせて足を止めさせた。
そして、小さく何かを呟き始める。
すると、足元に黒と紫が混ざったかのような魔方陣が浮かび上がり、コルティとケリケラを巻き込むように円が大きくなっていった。
「くっ!」「眩しぃ!」
視界が光に覆われ、その後すぐに暗転する。
だが、数秒程度で変化が収まった。コルティとケリケラが目を開けると、そこは先程までいた洞窟とは全く異なっていた。
「転移? でも、ここは」
コルティがぐるりと一瞥する。
そこは不思議な集落であった。
木造と赤レンガの家が十分な距離を保ちながらまばらに建ち、道も土を整地し均しただけ、黄金の小麦畑や単色豊かな野菜や果実が列をなして育っている。
まるで、一昔前の村や里を連想させた。




