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Lost12 優しき青年は、冷酷な魔の王になれるのか  作者: JHST
第六章 虚構と化した世界
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⑧洞窟に入ると、そこは不思議な集落だった

「そりゃぁ、ボク達の仲間の中にだってずるい奴も、酷い奴もいるよ。でも人間も同じでしょ?」

 ケリケラは自分達だけが悪い存在ではないと口を尖らせるが、大魔王の反応は冷ややかだった。

人間共(奴等)が、そう思ってくれれば良いがな」

 彼女の意見を正しくもあり、間違っていると評して、大魔王は再び足を進める。その傍を獣人や亜人の子ども達が笑いながら走りすぎ、人間の子どもが負けじと追いかけて行った。

「そう、思って欲しいものです」

 子ども達の背中を見つめながら、コルティとケリケラが後に続く。



 気が付けば、コルティ達は街の東門を越えて、近くの森の中へと足を踏み入れていた。

「えぇ、まだ歩くの?」

 同じ速さと高さを維持しながら飛ぶ事に疲れたケリケラが、音を上げる。

「着いたぞ………ここだ」

 大魔王が森の中で足を止めると、そこには巨大な洞窟が口を開けていた。


「洞窟?」

 奥から冷たい空気が漏れ出し、コルティ達の火照り始めた足を冷やし始める。だが中は暗く、松明を設置するような壁掛けも見当たらない。

「歩けば最奥まで数時間はかかる洞穴だ。昔は鉱山として動いていたらしいが、既にそれらも枯れ果て、今は毒をもつ生物が多いだけで、街の人間どころか冒険者ですら入ろうとしない」

「………何故、これを私達に?」

 コルティは、主人に関わる話だと思っていただけに、その表情に戸惑いが見え始める。

 大魔王は二人の表情を見てから、洞窟の奥へと目を向けた。

「ここはかつて、奴らの物資集積所だった跡地だ」

「奴ら?」

 ケリケラが首を傾げる。

「………まさか、御主人様を追いやった」

「そうだ」


 二年前。

 大魔王はこの洞窟に物資を保管していた会社(カンパニー)の者達を襲撃したと語る。洞窟内にいた者達の事には触れなかったが、コルティは、話の内容から彼らがもう大地に足を付けてはいないと結論付ける。

「こっちだ」

 話を終えた大魔王は、二人を洞窟の入口まで入らせて足を止めさせた。

 そして、小さく何かを呟き始める。

 すると、足元に黒と紫が混ざったかのような魔方陣が浮かび上がり、コルティとケリケラを巻き込むように円が大きくなっていった。

「くっ!」「眩しぃ!」

 視界が光に覆われ、その後すぐに暗転する。

 だが、数秒程度で変化が収まった。コルティとケリケラが目を開けると、そこは先程までいた洞窟とは全く異なっていた。

「転移? でも、ここは」

 コルティがぐるりと一瞥する。

 そこは不思議な集落であった。

 木造と赤レンガの家が十分な距離を保ちながらまばらに建ち、道も土を整地し均しただけ、黄金の小麦畑や単色豊かな野菜や果実が列をなして育っている。

 まるで、一昔前の村や里を連想させた。

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