⑥それは前進か、後退か
「他にも、私達の知る者達が今どうなっているのか、御存じであれば教えて頂けませんか」
「良いだろう」
大魔王は、この五年間で集めた情報を伝えた。
女王が二年程前から、体調不良を理由に民衆に姿を見せていない事。
魔王軍の各部族を代表していた委員会が、元軍師シュタインの行方不明から始まり、小鬼族のクルマンが、行商の途中で盗賊に襲われて死亡。有翼人族のベルゲンは、部族内で発生した流行病を患って病死。主だったメンバーを失った委員会は、指揮する者も定まらないまま意見もまとまらず、事ある毎に対立、そして内部不和を理由に解散に至った。
「そこまで、酷かったとは………」
コルティの重い表情に、大魔王は淡々と続ける。
「委員会はなくなったが、王国は約束を果たす為、蛮族の呼称を禁止して『亜人』に統一。人間と共存出来る社会と法を取り入れた。各部族も生き残る為に王国に協力し、僅か五年で旧カデリア領の復興は成し遂げられたというのが、一般的な知識だ」
戦前の人口や発展には遠く及ばないが、街ごとに自立した運営ができる程度には立ち直っているというのが、国民の認識であった。
「その意味では、貴様の言うように、共存は実現したと言える」
「ですが、大魔王様は別のお考えを持っていらっしゃるのですね」
コルティの問いに大魔王は小さく頷くが、その先を話そうとはしなかった。
「さて、長話が過ぎた。そろそろ失礼させてもらおう」
「っ!?」
コルティとケリケラが目を大きくさせて立ち上がる。
だが大魔王は心配するなと目を細めた。
「こういう場合、余が全て支払うという人間の規則がある事を知っている」
「………いや、そうじゃなくて。っていうか、規則とかないし」
ケリケラの体から、『そうじゃない』と、力が抜けて行く。
「ふむ、女共から事ある毎に説諭されたのだが………違ったのか」
「いえ。あの、大魔王様。続きを………話したいのですが」
コルティも、どんな表情で伝えればよいのか分からず、真剣な表情で訴える事にした。
だが、彼女の表情を見ても、大魔王は先程と同様に『心配するな』とだけ返してくる。
「ついて来るがいい。ここから先は言葉だけでは理解できん」
大魔王の意図する事が分からず、コルティとケリケラは思わず顔を合わせた。




