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Lost12 優しき青年は、冷酷な魔の王になれるのか  作者: JHST
第六章 虚構と化した世界
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④知らない国

「最後は、大多数の………つまり弱い側によって切り捨てられる」

「訂正を。御主人様は………周囲に切り捨てられた訳ではありません」

 コルティはテーブルの下で裾を強く掴みながら必死に声を殺し、大魔王に対して正面から反論した。

「本当に………そう言えるか?」

 大魔王は相田が魔王であったこと、カデリア王国との戦争が相田達の協力によって成し遂げられた事が大きいという真実が民衆達に伝えられておらず、彼の名ですら流れていない事を二人に伝えた。


「………それは」

 二人がその違和感に気付いたのは、ウィンフォス王国を離れてからであった。その時は、コルティもケリケラも、遠く離れた国にいたという事もあって、信憑性に不確かがあると感じていたが、戻って来てからはそれが確信に変わっていた。

「どうした。今度は否定にたる根拠がないか」

 僅かな沈黙が、大魔王に隙を与える結果となった。

「別に、貴様達の信を疑っている訳ではない。だが、自分達の認識と、周囲の認識が常に同じだとは思わない事だ。恐らくお前達の事だ、この国に戻って真っ先に情報の真偽を確かめたのだろう?」

 コルティとケリケラが唇を噛みしめながらも小さく頷く。


 カデリア王国との戦争の勝利。

 それは、王国騎士団と義勇兵達の勇士、それらを支援する民衆の団結によって成し遂げられた逆転劇として語られていた。

 そこに、蛮族との取引どころか、魔王軍も魔王も、そして彼の名前すらも、公式の文面には残されていなかったのである。

 唯一近い情報として、カデリア王国の不利を知った同王国南部に住む蛮族が一挙侵攻し、カデリアの穀物地帯が襲われた事。結果としてカデリア王国が兵力を分散せざるをえなくなり、それがウィンフォス王国勝利の追い風となったといった程度であった。


 声が沈みながらも、コルティは自分達で調べてきた結果を話し始めた。

「私達は王都(ウィンフォス)にも立ち寄りましたが、既に王国との約束を履行する為の専門委員会は解散していました。仲間達の所在も………分かりませんでした」

 南の国へと旅をしてきた二人がアリアスの村を経由して王都へと戻ると、そこには、姿形こそ変わらない風景が出迎えてくれたが、自分達を知る者は少なかった。各部族の集落も放棄された後が目立ち、同胞と会えても何も知らず、分からず、魔王軍の幹部級とは一人として会えていない。

 それは復興中のブレイダスでも同様で、満足な情報は手に入らず、ついに東の最果ての街であるゲンテへと辿り着いたというのがこれまでの経緯であった。

 

「王城ではリリア女王にも取り次いでもらえなかった。知っている国のはずなのに、まるで異国に来たような感覚………ボク達がいなかった間に、一体何が起きたのか、さっぱり分からないんだ!」

 ケリケラが翼を広げて感情を露わにする。

 そこに食事が運ばれてきた。

 大魔王の視線が水平に動く。

「まずは食べるがいい。今すぐに余の知っている事を話しても良いが、食べながら聞くようなものではない………何だ、またその顔か」

「益々、人間らしいですね」

 溜息をつくコルティの言葉に大魔王は頬を緩ませ、鼻で笑う。

 確かに食事中にする話ではない。コルティはケリケラに声をかけ、食事を済ませてしまおうと両手を合わせた。

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