⑩国家機密
「行っちゃったね………女王陛下」
ケリケラがコルティと共にリリア達を見送り、誰もいなくなった庭で呟く。
「ですが、陛下がおられる限り、この王国は大丈夫でしょう………さぁ、私達もこれから忙しくなりますよ?」
「いつ言おうか悩んでいたけど………私達が旅に出る事、さらりとカレンにバラされちゃったね」
ケリケラの言葉には、女王への感謝の気持ちと敬意が込められていた。
―――――――――
「陛下………余り御一人で出歩かないようにお願いします」
リリアの横、やや後ろを歩くロデリウスが、言葉で釘を刺してくる。
だが、リリアは鼻を突き出すように夜空を眺め、彼よりもさらに一歩多く跳び出すように前へと出る。
「あら? 私が出て行く事を黙認した人が、それを言うのですか?」
彼女の意地の悪い言葉に、ロデリウスは無言で返したが、リリアは自然と真剣な表情へと移り変え、横目のまま睨むように言葉を積み上げる。
「ロデリウス。彼の私物は、まだ処分していませんね?」
「………はい」
ようやく思い通りの言葉を吐かせる。
「彼の私物は、王国の最重要機密とします。貴方には、それらを城内にある王族専用の書庫、その最奥への保管を命じます」
「最奥………歴代の王族しか閲覧を許されていない歴史書のある部屋に、ですか?」
ロデリウスが驚きを隠しつつリリアに顔を向けると、リリアが微笑み返す。
「分かりませんか? 貴方程の知恵をもつ宰相であっても、私の考える未来は見通せませんか?」
リリアは彼に対して、自身の歩数を数えるように幾ばくかの時間を与えたが、明確な答えは得られなかった。
「ふふふ。貴方の扱い方が分かった気がします」
「お戯れを………」
視線を外しながら表情を戻していくロデリウスに、彼女が不敵に笑う。
「彼の私物は、王国の繁栄を生み出す宝、万金に値するものです。それを一宰相の判断で処分する事など許しません………彼の貴重な品々は、王国の歴史が記された書物と同様に扱い、彼の私物が理解できるようになるその時まで、保管すべきです」
危険だからと言って捨てる必要はない。リリアはそう説明した。




