⑨互いの戦場へ
「カレン、貴女がやりたい事は何ですか?」
「私の………やりたい事、ですか」
カレンの心の中で何度も女王の言葉が繰り返される。同時に、リリアが部屋の入口を一瞥するとすぐに顔を戻し、目を大きくしていた彼女にさらに言葉を送る。
「コルティとケリケラは、しばらくしたら旅に出るそうです。そして己を鍛え上げ、彼と再び会う事に全てを賭けると言っていました」
そして『私も』と言い始めた瞬間、リリアの脳裏に、ある者の言葉が流れた。彼女はその者の言葉を拒絶する事なく、口にする。
「私も、王国の復興と人と亜人との共存を第一に考え、国政を進めていく所存です」
リリアはロデリウスの言葉の意味を理解した。
「騎士カレン。明朝、謁見の間にて、貴女に伝えるべき事があります。その時に、貴女がやりたい事を私に教えてください」
「………はい」
カレンは、今できる精一杯の力で小さく頷く。
それで十分だと、リリアは微笑み返し、踵を返す。
「ありがとうございます」
部屋を出てくるリリアに、コルティとケリケラは頭を下げたまま言葉を送る。
「いえ。お礼を伝えるべきは私の方です………コルティ、ケリケラ、貴女方に感謝を」
リリアも自分が見るべき方向を見つけたと、自信に満ちた表情のまま頭を下げた。そして二人に対して、旅立つ際に必要な物があれば遠慮なく申し出るように伝え、玄関に向かった。
「雨が………止んだようですね」
コルティから雨よけの頭巾を受け取る前に扉を開けたリリアが、雲の合間から見える輝く星々と、大小の月を見上げた。
そして視線を落とすと、家の外で待つ金髪の男と数人の兵士達の姿が目に留まる。
「どうやら、全て見透かされていたようです」
リリアはコルティから頭巾と外套を受け取り、肩をすくめた。
「陛下………御武運をお祈りいたします」
コルティが微笑む。
「当然です。カレンに偉そうな事を随分と並べてしまいましたからね………少なくとも、宰相如きに好き勝手されない程度には務めないと笑われてしまいます」
リリアが手を差し伸べる。
「改めて感謝を………今度は、私も例のお店に招待して下さい」
「喜んで。その時は、陛下の奢りだと皆に言っておきます」
コルティも手を伸ばし、握手を交わした。




