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Lost12 優しき青年は、冷酷な魔の王になれるのか  作者: JHST
第五章 耐えがたきを耐えてこそ
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⑧女王は自分に問う

 リリアは上半身を起き上がらせると、潤ませた目を手の甲で拭い、鋭い眼で見下ろす。

「立ち上がりなさい。騎士カレン。あなたはそれでも、我が王国の英雄にして、私の命の恩人であるデニスの娘ですか?」

 リリアの拳が強く握られる。

 父の名を出され、カレンの肩の震えは徐々に小さくなっていった。

「そこで泣き続けて何が変わるというのですか? 大切だと叫ぶ仲間の時間を無駄に使い、多くの慰めと同情を貰い、その上何を求めているのですか!?」


「………女王陛下」

 余りにも鋭利な言葉に、コルティが顔を覗かせて来るが、リリアは左手を横に広げ、背後にも睨みをきかせた。

「お下がりなさい………これは、私と私の友である彼女との問題です。何人たりとも口を挟む事は許しません」

 この家に来た時とは明らかにリリアの表情は異なっていた。その顔に気付いたコルティは、小さく頭を下げたまま後ずさる。


「カレン」

 改めてリリアは前を向き直す。

「私はお父様の国政と比べれば依然幼く、貴女のお父上の勇気と比べれば、到底足りない未熟者です。ですが、そんな私でも、多くの人達に支えられて、今の私があるのです」

 その分野毎に、優れた者がおり、互いに不足している部分を補い合い、支え合って社会が成り立っている。リリアは自分自身に聞かせるように、他者の優れた点を並べ、いかに自分が一人で何もできない事をさらけ出した。


「………女王陛下は、決して無能ではありません」

 カレンの顔が上がる。

「ありがとうございます」

 胸に手を当て、リリアは素直に感謝を伝える。

「同じように、貴女も無能ではありません。貴女が無能ではないと証明してくれた私が保証します」

 彼女は腰を曲げ、自分の顔をカレンの顔に近付けた。

「私は、国民と国家の安寧の為、未来を作らなければなりません。時には、自身の感情に反する事もあるでしょう。許せずとも許さなければならない事もあるでしょう」

 言葉を一瞬詰まらせたが、リリアはカレンの瞳をしっかりと捉え続ける。

「ですが、私は皆が支えてくれる限り、自分に負けない事を誓います」

「陛下は………ご立派であられます」

 カレンは座ったままだったが、体を起こし、何度も涙を拭いながらリリアと正対する。

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