⑥未来の為に
「陛下………私からも、お伝えする事がございます」
覚悟を決めたコルティが、リリアの顔を上げさせた。
そして目を合わせて、可能な限り言葉を選ぶ。
「今後、我らは、旧カデリア領の復興に向け、各部族から出稼ぎとしての労働力を派遣する準備を整えております」
「一体、どこからその情報が漏れたのか、気になる所ではありますが………貴女方の方針には感謝すべき点があると判断します。人間と魔物との共存に向け、良い決断だと思います」
リリアが女王としての振る舞いに戻り、静かに頷く。
だが、コルティの覚悟はここからであった。
「冬が明けましたら、私とケリケラは旅に出ようと思います」
「旅に………ですか」
リリアの瞳が開き、コルティが頷く。
コルティは、リリアの冷めたカップを取り上げると、そのまま厨房に入り、自分の分も含めて新たにスープを注ぎ足す。そして、再びテーブルの上にカップを置き直した。
「いつか将来、御主人様と再び会えるその日まで、私とケリケラは己を鍛えながら成すべき事を探し、全てに耐えていくつもりです」
リリアもコルティ達が大魔王と接触し、様々な情報を持ち帰ってきた報告を受けている。だが、大魔王が何を考え、どのようにして相田と再会しようとしているのか誰も理解できておらず、コルティは、何か方向性を見い出したかのような決意で語る。
「何か、心当たりがあるのですか?」
協力できる事は、是が非でも協力していきたい。そう思う彼女だったが、その期待とは異なり、コルティは首を横に振るだけだった。
「特に明確な根拠があっての事ではありません。ですが、まずは自身の能力を高め、最終的には大魔王様の傍で待ち続けようと思います」
いつか会える日の為に、守られる側ではなく、守る側として強くなっておきたい。そして何より早く会う為に、最も可能性の高い人物の近くで待つ。コルティは、自分の人生をその為だけに捧げようと決めていた。
「全ては、未来の為に」
「………未来の為に」
コルティの言葉の前提には、相田の存在がある事はリリアにも理解できた。だが、彼女にはそれ以上に、女王でありながら自分の視線が誰よりも遠い先を見ていなかった事に気付かされる。
「コルティさん」
改めて姿勢を直し、リリアはコルティの名を呼ぶ。
「カレンさんの部屋に案内していただけませんか?」




