⑤同じ人を想う者
「その………カレンさんは、大丈夫ですか?」
リリアの言葉に、コルティは天井に目を向ける。そして彼女の部屋がある先に視線を向けると、そのまま目を瞑り、一度大きく深呼吸を挟んだ。
「あれから、部屋を出ようとしません。食事は何とかとってもらえていますが………盗みに入られた事よりも、御主人様の持ち物が盗られた事の方が、かなり心を傷付けてしまっているようです。今は一人にさせないよう、ケリケラについてもらっています」
当事者に最も近いと感じていたリリアは、何も答えられなかった。
そこにコルティが、『ですが』とすぐに続ける。
「………私は、この家に賊が入る事を知っておきながら、それを黙認してしまいました。そう言う意味では、私もカレンさんを傷付けた人間の一人という事になるでしょう」
懺悔に近い言質に、リリアは目を大きくさせた。
「………何故ですか?」
リリアが両手をテーブルに乗せる。
「何故………何故、貴女は大切な人の物が奪われる事を知っておきながら、それを許したのですか!」
女王としてではなく、同じ人を想う者の一人として、二人が相対する。
コルティは若干唇を噛みながら視線を外すが、すぐにリリアへと顔を向け直す。
「陛下………陛下は、御主人様がこことは異なる別の世界から来られた事を御存知でしょうか」
テーブルに両手を置きながら前のめりになっている彼女に向かって、コルティは言葉を続けた。
「御主人様がこの世界に偶然お持ちになられた知識や技術が詰め込まれた本。そして御主人様と共にこの世界に連れて来られた数多の道具は、その殆どが再現不可能なものばかりです」
その知識や技術は、大袈裟に言えば世界の流れを変えてしまいかねない救済と恐怖を表裏にもつとコルティが順を追って説明する。
「ロデリウス殿は、その恐ろしさに気付き、無闇に拡散していく事を防ごうとしたのだと思います」
「………言っている意味は分かります。ですが―――」
リリアは、両手を震わせながらもゆっくりと体をソファーに戻し、膝の上で純白のドレスを掴む。
果たして、賊を入れさせるという極端な手段を用いる必要があったのだろうか。様々な理由が浮かんでは首を左右に振り、それが反復される。




