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Lost12 優しき青年は、冷酷な魔の王になれるのか  作者: JHST
第五章 耐えがたきを耐えてこそ
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④言葉が含む意味

「申し訳ありません。かえって部屋を汚してしまいましたね」

 肩に大きめの手拭いを乗せながら、居間(リビング)のソファーに腰かけるリリア。彼女は、部屋の隅に寄せられた食器の破片を横目にしつつも、温かいスープの入ったカップを包み込みながら口に付けて苦笑する。

 根菜類を長く煮詰めたような濃厚な、しかし野菜が殆ど見えない液体が、冷え切った彼女の体を内側からゆっくりと温め、広げていった。

「いいえ、とんでもありません! こちらこそ、粗末なスープしかありませんが、どうかお体を冷やさないようにしてください」

 小さなテーブルを挟んで立つコルティは、激しくなった心臓の鼓動を押さえるように胸に手を当て、夜の賓客に精一杯対応しようと表情をつくる。


 だが、そんな真面目なコルティを、リリアは肩をすくめて笑って見せた。

「そんなに畏まらないでください。まだ即位する前にお会いした時の表情の方が、貴女らしいですよ?」

「は、はい」

 リリアに諭され、コルティは耳を垂らし、何度も深呼吸を繰り返す。


「………それでは」

 コルティも相対する形でソファーに腰掛けた。

「女王陛下自らの御訪問………しかも護衛等ない所を見るに、お忍びでと察しますが、どのような御用件でしょうか」

 言葉を並べ終える頃には、コルティの心は落ち着きを取り戻していた。むしろ背筋が伸び、真剣な眼差しで女王を見つめられるようになっていた。


 リリアは、スープが二口程残しているカップをテーブルに置き、周囲を見渡す。コルティが慌てて破壊した部分を除けば、掃除が行き渡り、整理整頓と清潔が共存、調和している様子が伺える。

「聞いてはいましたが、本当に金目の物には手を付けなかったのですね」

 何も知らない人間からすれば、彼女の言葉の意味を察する事は困難だが、コルティはやや目を細めるだけで、聞き返す事も、動じる事もしなかった。

「………賊の事です」

 リリアが一応の意味を込めて付け加える。

「存じています」

 コルティも短く答えるだけに留めた。

 そんな彼女の言葉の意味を、リリアは彼女の瞳から察する。そして『そうですか』とだけ返し、リリアは再びカップに手を伸ばす。

 既にカップは人肌よりも冷めていた。

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