⑫人以外が生き残る為に
「………成程」
一人でシュタインが納得し、コルティに羊皮紙を手渡す。そして彼女が文字を目で追っている中、ひび割れた顎の鱗をなぞるように、悪くないと唸った。
「………旧カデリア領の復興に対する、労働者の募集」
文字の流れは公的な表現ではなかったが、羊皮紙には、戦場となり荒廃したカデリア王国復興の為に、労働者を大々的に募集する旨が記されていた。
そこにシュタインが補足する。
「労働者には賃金と食事、生活出来る最低限の住居等が保障されるようですな」
それは、ウィンフォス王国が生活に困窮する国民達への救済と、併合した領地の速やかな復興を同時に満たす為に立ち上げた公共事業の一種であった。
「上手くすれば、この王都に集まり過ぎた労働者を分散させる事も叶いましょう」
「カデリアに人が流れれば、シモノフの大関所であぶれている難民達の問題も、解決の方向に進むかもしれませんね」
「「成程、そう言う事ですか」」
共通理解を計りながら、コルティとシュタインが、クレアが伝えようとした意味を理解する。
「シュタイン。明朝、そこで寝ているツヴァイールとクルマンと共に伝令を出し、各地に散った同胞達にこの情報を伝えて下さい」
「同胞達を、この施策に参加させるのですな」
良い判断だと、シュタインが何度も頷く。
最終的に参加する数は未知数だが、人間と同様に亜人達も生活、特に食料問題に苦しんでいる。そこへ、旧カデリア領復興の労働者として亜人達が参加する事で、各部族の集落の住人達を減らし、かつ安定して賃金を仕送りに出来れば、各部族が王国からの支援だけに頼らない『自立』を促す事が出来る。
「王国にとっては、さぞ面白くないかもしれませんが」
「背に腹は代えられない、というものです。恐らく大丈夫でしょう」
亜人達が雇用される分、国民達に仕事と生活の支援が行き渡らなくなる事を懸念するシュタインに、これまで履行されなかった分の利子だとコルティが鼻を鳴らして流す。
この策が、恐らくロデリウスの発案であろう事は、二人にも予測できた。




