⑦勝利の先にあった世界
「ぉー、シュタイン。まだ生きていたかギー」
コルティとシュタインが視線を降ろし、肉串を握りながら近付いて来た小鬼族のクルマンに目を向ける。
「ええ、クルマン殿。まだ、大丈夫ですよ」
シュタインが両肩を上げ、苦笑する。
「先日、リリア女王陛下の命により、各部族の集落に援助物資が支給される事が決まりました。十分な量とは言えませんが、最初の収穫までの間くらいは、まぁ何とかなるでしょう」
「そうかー。それは助かるギー。小鬼族は、今一番数が多いから大変だギー」
あの戦争から三か月。蛮族と呼ばれた各種族は、魔王軍結成の為、多くの戦士達を送り出した。その結果、残された者達だけでは冬を越す為の食料の確保がままならず、戦士達が戦争から戻ってきた途端、どの部族でも深刻な食料不足に陥ったのである。
特に水辺の多くが凍ってしまった蜥蜴亜人族は、その影響を大きく受け、しかしながら同様に苦しんでいる他部族から支援を要請する訳にもいかず、今回王国からの援助を特別に受ける事になった。
「援助が多すぎても、復興途中の人間達の反感を買うだけですから………塩梅としてはいい具合でしょう」
「戦争に対する契約がまだ十分に果たされていませんからね………王国の台所事情が未だ苦しい事は理解できますが、彼等にとっても我々との関係に軋轢を生む事は本意ではありませんからね」
ウィンフォス王国にとって戦争への勝利は大きな戦果であったが、その先に待っていたのは長期にわたる貧困であった。蛮族と呼ばれた彼等もまた同じ状況であるが、戦争への協力は無償ではない。王国からの援助は契約の一端であったが、それが未だ果たされていないのが現状だった。
コルティ達、元魔王軍の幹部を中心とした交渉団は、各族長達と協力して周囲の反感を抑え、何とか穏便に済ませているものの、時間が経てば経つ程、人間との共存は困難になっていく事は誰の目にも明らかである。
「おいらには難しい話だギー」
「しっかりしてください。あなたも今や、小鬼族を代表する一人なんですぞ?」
コルティ達以上に眉をひそめるクルマンに、シュタインが柔らかくも諫める。
「そうだったギー。でもおいら達は何でも食べられるし、体も小さいから、割としぶといギー」
ついでに数も多いと呆けた顔で言葉を並べる。小鬼族全員がそういう性格ではないが、彼のように物事を深く考えない小鬼は多い。故にしぶといとも言われている。




