⑦各々の目的で
荷馬車の上は戦場だった。
「カレン! そっち行った!」
「任せて!」
マキの脇を抜けた下着姿のフォーシィを、カレンが正面から待ち構えて担ぎ上げ、ようやく確保に成功する。
捕まってもなお空中で走り続け、少女はきゃっきゃと楽しんでいた。
「お着替えって、楽しいねぇ!」
「うん、大分違うと思う」
カレンがフォースィの体を左右からがっちりと押さえつけ、マキが両手を上げた少女の上から真紅の退魔服を通す。
十分程かけ、ようやくフォースィの着替えが終了する。
「まさか、大魔王もこんな日課を続けていたのかしら」
少女を追いかける子ども服を持った大魔王。カレンが想像もつかないと顎にしわを集め、呆れ顔を作った。
「うーん、師匠ならもっと早いよ!」
「え、本当に追いかけてたの!?」
ケリケラが気持ち悪そうに答える。
「でも、師匠の拘束魔法や召喚魔法には、全然敵わないの!」
「………どんな着替えなのよ」
マキが溜息をつきながら脱力し、残されたわずかな時間で自分達の荷物をまとめ終えた。
「そう言えば、マキ。この子、引き取るって本当?」
ケリケラが荷物を足で詰めながら後ろにいるマキに尋ねる。マキは、自分の片足に抱きついたままのフォースィの頭を撫で、彼女の言葉を肯定する。
「ええ。この子と一緒に過ごしてみようと思います」
火炎竜から生まれたとしても、その小さな体に多くの存在から影響を受けていたとしても、生まれてきたこの子自身に罪も責任もない。マキは、フォースィの無邪気な笑顔を見下ろしながら、少女が自分自身の力に溺れないように育てるのだと、優しい眼差しのまま強い決意を口にする。
「ケリケラの方こそ、相田さんを迎えに行くのでしょう?」
マキの瞳に、真面目に頷くケリケラの顔が映る。
「うん。ボクにはどうしたら会えるのかすら全然分からないけど、コルティと一緒に頑張ってみるんだ」
無邪気で無計画な言葉だったが、その表情は何年かかっても叶えてみせるという意思で溢れさせていた。




