⑥コルティの決意
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「ケリケラ。まだ終わりませんか?」
歩哨に出たリコルを見送ったコルティが、馬車の幌を維持する骨組みを叩く。そして、中を覗き込み、声をかける。
「もう、ちょっと! いや、こっちもちょっとぉぉ! こらぁ、待てぇぇって!」
中では、下着姿で走り回るフォースィをケリケラとカレンが狭い荷馬車の上で追いかけ、服を持ったままのマキが、あたふたとその場で少女の動きを追いかけるように回転していた。
本人達はそれなりに急いでいるのだろうが、傍から見れば遊んでいるようにしか見えない構図に、コルティの眉が下がっていく。そして、それ以上下げようもなくなってからは、代わりに溜息が地面へと落ちていく。
「………でも」
コルティが静かに眺め続けた。
「こんな時間は、もう手に入らないかも知れませんね」
今まで探し求めてきた答えの全てを得た訳ではないが、昨晩の大魔王との話や言葉から、多くの事実が判明した。何よりも愛すべき主人が生きていた事は、彼女の心に未来を見上げる力が注がれた。
「私達が、いえ………私がやるべき事に迷いはありませんよ」
幌から顔を出し、冷えた朝空を見上げる。そして、どこかにいるであろう大魔王に向かって、コルティは不敵な笑みのまま、言葉を投げる。
「御主人様と再び会うまで………私は、止まる訳にはいかなくなりました」
人間と人ならざる亜人達との共存を果たしつつ、あの人と会う為に必要な情報や知識、あらゆるものを集める。
そして大魔王と会う。
大魔王が何かを計画している事、そしてあの人と会う事も目的の一つとなっている事、それが最終の目的ではない事。それ位は彼女でも想像できていた。
コルティが白いエプロンの傍で拳を握り締める。
「御主人様」
一日でも早く会いたいという気持ちを抑え込み、彼女は壮大な決意を胸にした。




