⑤リコルの仮定
「俺も一緒に育てる事になるんだろうな」
少女を中心に、左右で手を繋ぐ自分と妹の姿が脳裏をよぎる。
だがそれも悪くないと、リコルは落ち着いた表情で空を仰ぎ、足を止めていた。
三人で食事を採り、学校に行く姿を見送り、一緒に遊びに出掛け、夜は寝静まるまで隣に居続ける。どこの家でも見られる景色を辿る事も、また1つの生き方である。
だが、その未来に期待しつつも、納得できない自分がいた。理由は分からない。だが、何かが違うとリコルは自分の魂が囁いているように感じた。
「………くそ」
歩き始めながら顔の上に手を置き、表情を崩す。
―――分からない。
複数の選択肢が並ぶ迷いではない。優柔な不断でもない。自分にしかできない何かをしなければならない。だが、それが何か分からなかった。
思わず隣に立っていた樹木に拳を当て、力を押し込める。拳は木材を圧縮させ、乾いた音を立てて軋み
を訴えた。
木の悲鳴を聴いたリコルが我に返り、拳の力を緩める。
「あの男なら、どうする?」
建国の時代にまで過去へと飛ばされた魔王相田。思い出すだけでも苦痛と屈辱が全身を駆け巡るが、リコルはあの男の性格を思い起こす。それが答えに近付くかもしれないと、根拠のない一筋の道を作り上げる。
そして、リコルは一つの仮定を生み出した。




