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⑪裏と裏の雑談

「それで? 俺達はこの後、どうすれば良い?」

 ラハームの短い言葉に、大魔王は顔を上げて右頬を吊り上げる。

大魔王(あんた)の事だ。どんな手品かは知らねぇが、この先の事も見えているんだろう?」

 その言葉の意味は、当たらずとも遠からずであった。

「そうだな………取り敢えず向こう二百年分の予定は考えている」

 大魔王は、まるで一週間の予定のような感覚で言葉にするが、双子竜もそれに負けじと笑い返した。

「何だ何だ、二百年ってよぉ。俺達が今まで生きてきた年齢よりも短いじゃねぇか。あぁ? そんなんで、本当に大丈夫なのかよ」

「兄者、兄者。俺達はもう大分昔に死んでるぞ? がははは」

 弟の言葉に、ラハームが『そうだった』と自分の言葉で再び笑い出す。

 北風と共に、双子竜の声が弱まっていく。


「悪いが、ここは任せておく」

 大魔王はそれだけを語ると、柄から手を離して立ち上がる。

「仕方ねぇな。もう動けるような体でもねぇし、大将がいなければ修復も出来ねぇ………やれることと言えば、ここの瘴気でも食うしか………あぁ、クソ、そう言う事かよ」

 ラハームが自分の役目を悟る。 

「おい。だが、あれだけは持って行けよ」

 いつの間にか荒野の上に現れた赤い卵を大魔王に指し示す。

 赤い卵(それ)は、卵と言うには巨大であり、小さな子どもの背程、または大人の膝の高さ程に匹敵する大きさであり、何の卵なのかすら想像できず、持ち運べるようなものでもなかった。

「昔の話だが、竜って言う種は、死ぬ前に自分の分身を産み落とすんだと」

 弟のラフームが短く説明する。


「周囲のクレーテルの増減が激しかったからな。今になって、ようやく具現化したようだ………まぁ、あの流星に巻き込まれる前に現れなかったと言えば、生まれる前から随分と運が良い」

 ラハームが冷静に言葉を繋ぐ。そして、竜は自分に近しい存在の影響を受け、さらに強い固体となって命を繋いでいくと、弟の言葉を補足する。

「言ってみれば、うちの大将や、白兎の影響を受けているかもしれねぇって事よ。忘れ形見と言うには縁起が悪いが………まぁ、誰にでも育てられる代物じゃねぇハズだ」

「………余に育てろ、と?」

 命を育むという知識はあったが、大魔王にはその経験がなかった。

「人間の強さを知りたいんだろう? 学ぶにゃ、良い教材だぜ旦那………人間(あいつら)は、実に面白い。そいつらに殺された俺らが言うんだ、間違いねぇよ。がはははは」

 多くの命を奪ってきたからこそ見えてくる。ラハームは自信に満ちた言葉で大魔王を諭す。その上で、飽きたら適当な時期に人間や魔物達に預けてしまっても構わないと、手のひらを反すように言い放った。


「良いだろう………人間の強さを知る事は、余の目的の一つだ」

 大魔王は左手を前に突き出すと、赤い卵の周囲の空間を歪めさせ、そのまま包み込むように取り込み、異空間に保管する。

 そして踵を返した。

「この瞬間が世界の始まり。今をもって、無限の歯車は回り出す。余の友の伝言に従い、この世界は呪われる事となった」

 もう二度と会う事はないだろう。大魔王は、静かになった双子竜を横に、そして背中にして、荒れ果てた大地を後にした。

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