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Lost12 優しき青年は、冷酷な魔の王になれるのか  作者: JHST
第八章 それ以外の道
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③戦わない道

 最終的に王国騎士団の了承が必要だと前置きしつつ、相田が具体的な方針を口にする。

「外から攻めるだけの余力はない。ならば、内部から敵を崩す事が肝要だ」

 城を外から攻めるのは下策、内部や敵の心を攻めるのが上策という兵法を相田は皆に説明する。魔王軍という他部族が一糸乱れずに連携できる高度な戦術は、未だ確立されていない。それでも、相田がこれまで読んできた物語から実行した有翼人(バードマン)を用いた空挺戦術は、この世界の人間達にとって想像されなかった戦い方だった。


「ベルゲンは有翼人(バードマン)族と、クルマンは小鬼(ゴブリン)族と協議し、空挺に参加する人選と当日までの慣熟訓練を指揮してくれ」

「承知しました」

「了解しましたじー」

 名を呼ばれた二人が、小さく頭を下げる。


「だが、此の策はあくまでも第二案だ」

 そこで先程の話になると、相田は一旦口を閉じる。

「余は王都に潜入し、発言力のある者と接触、王国内で停戦を提案させるよう提言するつもりだ」


―――戦わずして勝つ。


 これは全ての戦いにおいて上策である事を相田は力説する。その上で、両軍の損害がこれ以上増える事なく、尚且つ短期間で戦争を終わらせられる利点がある事を訴えた。

「危険な事は重々承知。故に、皆の声は当然であり、嬉しくも思う」

 周囲の意見を可能な限り拾うが、それでも主君の身を案じて発言する者達が絶えなかった。また無謀である事を素直に具申する者さえいた。

 だが、相田は多少の無理を言って通す。魔王と崇める者達からすれば、それ以上言葉を出す訳にもいかず、全員の意見が止む。


「そこまで仰るのであれば、我々はそれ以上何も言う事はありません。御心のままに従いましょう」

 シュタインが全員を代表して、締め括った。

 そして話題を変える。

「魔王様。王都までの道のりに大きな街が一つありますが、占領後は物資の集積場をそちらに移転なされますか?」

 補給線が王都から近くなれば、運搬にかかる負担を軽減出来る。常道として考えるならば、次の街を補給地として活用する運びになる。


 だが相田は静かに首を左右に振った。

 そして撤退となった場合、と言いそうになった口の上に指を乗せ、すぐに言い換える。

「いや、王都に近すぎる場所では我々の目を反らそうと、敵の別動隊が補給地を襲う場合があろう。距離が長くなる事は止むを得ないが、これまで通りここから物資を運ぶ事にする」

 補給地としては既に十分稼働しており、残った住民も落ち着機を取り戻している。相田は、ガーネットや有翼人(バードマン)族の一部を輜重要員として編入させ、定期的な空輸で対応する方針を定めた。


「承知しました。移動しつつ、部隊の編成を行います」

 シュタインも特に反対する事なく、話が終わる。

 それ以降は特に大きな意見もなく、朝議は解散となった。

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