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Lost12 優しき青年は、冷酷な魔の王になれるのか  作者: JHST
第六章 勝者は何処に
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⑩経験 対 信頼

「フォーネさん!」

「うん!」

 二人が互いに背中を合わせる。

「「まずは!」」

「受けてみますか!」「受けてみましょう!」

 相田の真似事のように、二人は両手を叩くと大きく息を吸い込み、やや足を広めに開く。

 左右からセルの拳と精霊の剣が同時に襲い掛かった。

「「せぇぇぇのぉっ!」」

 フォーネはセルの振り下ろした拳を両手で受け止め、一瞬遅れてコルティもエクセルの右手刀を斧の側面で受け止めた。

 そして互いを支え合うように、二人の背中がぶつかり、支え合う事で姿勢を維持させる。


「ほぉ、こいつらっ!」

 セルとエクセルは、さらに攻撃を押し込もうと息を吸い込み、両足で地面を蹴り込んだ。だが、フォーネとコルティも、これ以上押し切られないよう、背中で支え合い、腕を伸ばし、歯を食いしばりながら防ぎ続ける。

「フォーネさん!」

「コルティ!」

 互いの合図で背中を弾き合い、フォーネはセルを、コルティはエクセルの体を弾き飛ばした。

「へっ、即席にしちゃぁ悪くねぇ!」

「………情報不足。引き続き情報を収集しながら、攻撃を続行します」

 セルもエクセルも大した被害を受けず、崩れかけた態勢を整える。


「まずは一発!」

 フォーネがセルの懐に飛び込み、大きく振りかぶって殴りかかる。

 しかし、その拳は突如現れた銀の盾で防がれる。

「マスターを守るのは私の役目です」

 エクセルが僅かな隙間に入り、左の籠手に相当する腕を薄く広げるとフォーネの一撃を受け止めた。


「かかっ! 悪いが、連携ではこっちの方が上よ」

 フォーネの視界が盾で塞がれていた僅かな瞬間で、セルは彼女の側面で回転(ローリング)し、背後を奪う。

「こちとら、もう何年も戦ってきたからなぁっ!」

 セルがフォーネの背後から殴りかかる。

 しかし、セルの拳は透明なガラスを何枚も破った所で止まり、彼女の背中まであと指一本分の距離で止められた。

「魔法障壁かっ」

 舌打ちするセル。


「連携では、こちらも負けてはいません!」

 コルティが右手を突き出し、魔法の発動を終えていた。

 そして即座に、フォーネとコルティが戦う相手を切り替える。

「ししょーの為にも!」「御主人様の為にも!」

 フォーネは右足を高く振り上げ、エクセルの側頭部を狙う。コルティはセルに飛び込み、鋼鉄の三日月斧(バルディッシュ)を振り上げた。


「防御可能な上段攻撃と判定」

 フォーネの上段蹴りを防ごうと、盾と化していた左上を掲げたエクセルが、腰を中心にくの字に曲げられていた。

 気が付けば、フォーネの足は上段から中段への蹴りへと軌道を変えている。

「………情報不足」

 エクセルが右へと吹き飛んでいく。


「こ、こいつ! 足の関節がねぇのか!?」

 コルティの単純な振り下ろしを横に飛び抜けていたセルが、目を大きくさせる。

「これぞ、カラテの奥義!」

 フォーネはエクセルを蹴り飛ばした反動で自身の体を大きく浮き上がらせると、蹴った反作用を利用して半回転。コルティの攻撃を避けたセルに相対すると、右足は既に直上へと振り上げられていた。

「カカトのオトシ!」

「ごはぁぁ!」

 セルの後頭部が、振り下ろされたフォーネの踵を受け、顔面から地面へと落下する。


 相田が持っていた漫画本(教本)から、真似できそうな技を日々学んだ成果であった。本来の技としては円回転から後頭部へと叩き込むという美しく芸術的な軌道を描く技だが、未熟なフォーネでは足を上げてから曲げて下ろす単純な動作で実行させる事が精一杯だった。

「コルティ、やったね!」「えぇ!」

 避けられる前提で放ったコルティの一撃があってこその直撃。フォーネとコルティは、勢いよく頭上高くで手のひらを合わせた。

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