2章 プロローグ
真っ暗な部屋の中、炎が見える。
小さな炎は煌々として眩しい。その炎のせいで部屋の様子がわからない。
暗闇に目が慣れないのだ。
……一体ここはどこなのよ。
夢の中のように意識はぼんやりとしているし、身体が金縛りにあったように動かない。
さっきまでエストといたはずなのに。
声をあげようにもなかなか出なくて唸り声のようになってしまう。
「ふふ……おはようございます、ソフィア様。ようやくお目覚めですね?」
「う……あ、なた……誰なのよ……」
前の方からだろうか?
初めて聞くその声は、性別の判別がつきにくい声だった。意識がぼんやりとしているせいかもしれない。男なのか、女なのかもわからなかった。
「そう……。まだ考え事ができるほど、意識が残っているとは。意外と芯がしっかりとしていますね」
「うあっ……うぅ……」
――何……これ。あ、たまが……
「ほら、何も考えられなくなってきたでしょう? 大丈夫、少し協力してもらうだけですから」
「な……んで、私……なの? 私は……あ、あなたなんて……しらない」
「すみません。ソフィア様が悪いわけじゃないんです。ただ、君が一番扱いやすそうだったから」
「そ…んな……」
「どうしても、……をこけにしたあの子を許せないんですよ。どうして選んでくれなかったんだろう。一番あの子に相応しいのは……なのに」
段々と語尾が強くなるにつれて荒くなっていく声を朦朧とする頭で聞いていた。
聞き逃さないように、せめて少しでも顔が見えればと思いながら。
「君には働いてもらいますよ……」
「ば…か……」
ばかじゃないの、と言おうとして最後まで声にならなかった。
薄れゆく意識の中で、本当の馬鹿は私だと自分を呪った。