またお会いしましょう
7
草相撲が開始されて引っ張り合う。こちらは子供2人で相手は妖精がいっぱい。観客は他の妖精に女王のリリィ。
よくよく考えれば2対多数ってのは卑怯ではないだろうか。だが草相撲は相手を引っ張るのではなく相手の草の綱を切った方の勝ちなのだ。一番の要は力ではなくて綱の頑丈さだ。
「おーえす。おーえす」
「ひっぱれひっぱれ~」
「妖精の力は強いぞー!!」
妖精たちが掛け声を出しながら頑張って草綱を引っ張ている。
「妖精さんって力が案外強い」
「だなー。普通の綱引きだったら負けてるわー」
ズルズルと引っ張られるヒロオとアキラ。まだ草綱は千切れない。どっちも頑張って頑丈に作っているのだから当たり前だ。
それでもアキラたちは負けるわけにはいかない。だが草相撲に何も駆け引きなんてない。ただ頑張って引っ張るしかないのだ。
「ほい、こっちも。おーえす」
「おーえす!!」
何度も言うが草相撲に何も策略や駆け引きは必要ない。お互いに頑張るだけ。そうすればおのずと結果が分かるのだ。そしてついに勝敗が分かる。
「いいぞアキラ。このまま引っ張れ!!」
「うん!!」
ぶちりっと切れた音。ばたばたと倒れる妖精たちとアキラにヒロオ。ガンガンに引っ張っていればどちらかの草綱が切れた瞬間に力余って転げるのは仕方ない。
ついに決まった勝敗。勝ったのはアキラとヒロオである。千切れている草綱を見ればどちらが勝者なんて分かるようなものだ。
「やった…やったやったよヒロオ!!」
「おう、やったな!!」
ハイタッチをして勝利を噛みしめる。反対に妖精たちは負けて悔しいのか泣いていた。負ければ誰だって悔しいだろう。
まさかの悔し泣きに勝った嬉しさが吹き飛びそうになるが、ここでヒロオが男らしく呟く。
「勝負の世界とはこういうものだ…!!」
「なんか達観してるねヒロオは」
「生きてる年数が違う!!」
「ぼくと同じでしょ」
男らしく言葉を発するヒロオを無視してアキラは妖精たちを慰める。
「慰めるなアキラ。勝負の世界は非情だあ!!」
「はいはい」
遊びなのだから悔しいのは一瞬だけだ。その後は妖精たちが「もう一回、もう一回」と言う。
いくらでも遊んでやりたいがアキラたちにも帰らないといけない。だから妖精たちとお遊びもここまでだ。
「こらこら貴方たち。ここまでですよ」
花の国の女王であるリリィが他の妖精たちをなだめる。
「見ていて面白い草相撲でした。でも教えてもらっても良いですか。どうやって勝ったのか?」
「え、頑張って勝ったんじゃ…」
「工夫したんでしょう?」
そういえば勝つためにヒロオはある工夫をした。言われたままにアキラはその工夫を教えてもらって試したのだがよく分かっていない。
「良いぞー」
簡単に説明しようとするヒロオ。
玉掛編みという編み方がある。これはワイヤーロープの編み込み方だ。方法はシンプルでロープのより方向に巻付けるように編み込むだけだ。
この編み方は綱を頑丈にする。工事現場でのワイヤーで使われている編み方であるのだ。
「そんな編み方があるんですね」
「ヒロオは何でそんな難しいこと知ってんの?」
「年季があるからな」
「だから同い年でしょ」
「勉強になります。我が国は毎日のどかに過ごしていますから新しいものが生まれてこないんですよ」
花の国はとても幻想的で綺麗な国だが科学的な発展や文化も大きく発展していない。アキラの感想だと公園や遊園地をそのまま国にしたイメージなのだ。
平和でのどかなのは良いがリリィとしてはもう少し国を発展させたいようだ。このままでも良いと思うが国をより良くするには必要な発展があるのだ。
この花の国は変化があまり無い。なのでヒロオとアキラが花の国に来たのはリリィにとって嬉しく思う。新しい変化を受け入れるのが花の国である。
「ありがとうございました。とても楽しかったですよ2人とも」
「こっちも楽しかったよ。妖精さんたちと遊べたなんて一生の思い出だ!!」
妖精と遊べるなんてそうそうできない。まさに夢や幻の出来事だろう。
他の妖精たちは別れを惜しむように2人の周りをワラワラと集まってペタペタと触ってくる。まるでもう少し遊んでいようと言う感じだ。だがヒロオもアキラもいつまでも花の国にはいられない。
元の世界に戻らないといけない。
「んじゃ帰るぞー」
「またね!!」
「また縁があるのならお会いしましょうヒロオにアキラ」
渡された此岸花をを掴むと2人は花の国から姿を消すのであった。
8
花の国。
色鮮やかな花々が咲き乱れる幻想の国。そこは妖精の女王が統治し、華麗な妖精たちが明るく暮らす。
妖精たちは遊ぶのが大好きだ。誘われたなら一緒に遊ぼう。遊びは花の種類がたくさんあうようにある。
2人の少年は一緒に遊び、楽しく過ごした。妖精の女王は彼らにまた会う約束をする。