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結局、王都から派遣されてきた魔法使いが水晶に力を籠めることで、どうにか領内には平和が戻った。貿易も正常化し、領民たちも少しづつ戻ってきている。
だが時すでに遅しだった。
問題は露呈し、イジドール家は領地、爵位をはく奪された。新しく派遣されてきたのは国王陛下の異母弟にあたる人物で、彼は領主になるにあたって、新しく伯爵の位を得たのだという。
爵位を失ったイジドール家は僅かに残った商売の利益で、何とか暮らしているようだ。
しかしバカ息子を養うだけの金は無かったようで、エリックは遠い親戚の、料理店をやっている叔父の元で、住み込みで働かされることとなった。
料理人というのはかなりの重労働、力仕事だった。頻繁に火傷もするし、包丁で手を切ることはしょっちゅうだ。朝早くの仕込みは手が凍えるし、具材は重い。
殆ど働いたことのなかった彼には相当堪えただろう。
ただ、賄いは食べられるし、給料もしっかりくれる。もう貴族には戻れないが、これからの生き方次第では道が開けるのかもしれない。
そのエリックは給料の多くを使い、あることをしていた。
リアーヌに手紙を出していたのだ。
彼は周りに助けてくれる人の居なくなった今になって、初めてリアーヌの誠実さ、大切さを実感した。
その思いや、もう一度一からやり直したいという願いを、手紙に込めて贈った。島への手紙を何通も送っていれば代金は高くつく。エリックの給料からすればかなりの高額だ。
それでも、いつか彼女に思いが届くことを願って送り続けるのだった。
ところがリアーヌは全く読んでいなかった。
読まずに可燃ごみと一緒に燃やしていた。そのため、何が書かれていたのか、リアーヌは一生知らないままだった。
次にカサンドル。
リアーヌとしてはカサンドルが捕まろうと捕まるまいと関係なかったのだが、このまま野放しにすると、世のためにならないと思った。
リアーヌが信用調査の会社に調べてもらった情報を王宮へ送ると、どうやら国が本格的に動いたらしい。数か月後に捕まったというニュースが新聞に載った。
この国で詐欺が死刑になることはないが、被害者の数も多く、被害額も大きい。長期間の懲役になることは間違いないだろう。
そして、どうやったのか知らないが、あんなにあった伯爵家の財産はすべて使い切っていたようだ。
リアーヌは、相変わらずハルトヴィンから大切にされていた。
確かに子爵領は内地のように栄えていないが、人は優しく親切で、そして愛する夫がいる。
栄えている場所は探せば沢山あるかもしれない。しかしリアーヌにとって、これ以上恵まれた地は世界のどこに行っても無いだろう。
島流しも、たまにはされてみるものだ。




