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異世界勇者より地元の重装片手剣の方が強いに決まってるよね! ~巻き戻り脳筋兵士は堅実に最強戦力を育てる~  作者: 無職無能の素人


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第18話 遺跡探訪

 視界の端が白で埋まっていく。

 魔物共が森を割り、目の前にいる俺に狙いを定めて押し寄せる。


 「オオオォォォォォ!!」


 肺が焼けつくほどの咆哮を吐き、踏み込む。

 大剣を思いきり横に薙いだ。


 ズバァァァァッ!!


 正面の五体、まとめて胴を断ち切った。

 柔らかい肉が風を切って飛び、赤い体液が派手に地を汚す。


 大剣を振り抜いた所にそれを飛び越えてもう一体。こちらに向かって、ただ分厚い腕を振るう。


「ふんッ!」


 左手の大盾をぐるりと回すように掲げ、縁で魔物を受け止める。

 ガンッ!重い衝撃が腕を伝うが構わずそのまま――叩きつける!


 ベキッ……ブチィィッ!!


 ねじ切れるように胴体が引きちぎれた。

 肋骨すらない、まるで柔らかく作られた人形のような身体。


 「……なんだこれは。脆すぎる」


 あまりの防御の低さに、思わず声が漏れる。

 爪もなく、武器もなく、知性もない。それでいて、ただ突っ込んでくるだけの無謀さ。これは一体何なんだ?


 敵の体の脆さに、ほんの一瞬、思考が逸れた。


 ――その隙を、魔物の群れが待ってくれるはずもない。


 「チッ……!」


 目の前に、十体近くが密集して突っ込んできた。

 全ての魔物が、牙も言葉もなく、ただ俺に向かって腕を広げてくる。

 視界が一気に白に染まる。


 「盾を構えろ!」


 セオの怒鳴り声が走った。


 ドンッ! バババンッ!!


 連続して炸裂弾が炸裂。魔物たちの腹や脚が裂け、煙と肉片が広がる。

 何体かがその場で吹き飛び、数体が転げて倒れた。


 けれど――すぐに起き上がった。


 「……おいおい」


 腕が折れようと、足が千切れようと、奴らは立ち上がる。

 痛みも、恐怖も、高揚も感じない。ただ、目の前にいる俺を殺して食おうとしているんだ。

 

 ヒュカッ!


 ナイフが飛んで、魔物の頭部で剥き出しになっている魔石を砕く。砕かれた魔物はそのまま倒れて動かなくなった。


「まっ、いくらタフでも弱点が剥き出しじゃあな」

「フォルク、上手く距離を取れよ」

「まかせとけ!」



 倒し方は分かった。力は強い、数も多い、だが脅威ではない。


「三十……四十……」


 何体目か数えるのも、もう曖昧になってきた。

 大剣が横一線に走るたび、魔物たちがまとめて裂かれて地に沈む。

 盾はもはや防具ではなく、敵を弾き飛ばす鉄塊。

 真横から突っ込んできた魔物を叩き潰せば、肉の弾ける音がした。


 奴らは、同じように走り、同じように跳びかかり、同じように死ぬ。

 傷ついた個体は一切下がらず、背後の仲間と衝突してでも突進してくる。

 それは戦術ではなく、本能ですら無い様に思えた。


 後ろではフォルクの槍が唸りを上げている。的確に魔石を砕き、魔物は崩れ落ちる。


「ふぅ……」


 フォルクが顔をしかめて手を振る。

 魔力灼けを避けるため、攻撃は最小限。

 だが、それでも確実に数を減らせていた。


 正直な話、拍子抜けするほどに楽だった。

 動きは早く力も強い、雑魚ではない。受け止める事が出来なければそのまま弾き飛ばされ、回避されるならすぐに囲まれ、一撃で倒せなければ数に飲み込まれただろう。魔力灼けの対策が無ければ途中で倒れていたかもしれない。


 だが、それでも俺達には――同じように死ににくるだけに見えた。

 それはさながら、そうなる為に生まれたかのように。


          ◇◆◇◆◇


 魔物の断末魔が消え、森の静寂が戻る。

 息を整えながら、足元の死骸を一瞥した。


「……終わった、か」


 そう口にしても、胸の奥にあるのは安堵でも達成感でもない。

 最初に感じた手応え──押し寄せる敵を押し返す興奮や、武器を振るう実感は、ほんの数分で霧散していた。


 あとはただ、同じ攻撃を何度も繰り返し、機械的に処理するだけ。

 感情も、駆け引きも、戦略も不要。ただ、叩いて、斬って、潰す。

 まるで作業だった。流れてくる魔物を殺す作業。俺一人で二百は殺した。


「……気味が悪いな」


 足元も体液でいっぱいだ。地面に刺していた杭を抜いて脇に移動し、剣を地面に突き刺して盾を外した。魔力は霧散していて魔力灼けの心配はない。

 堪える。風呂に入って体液と心を洗い流したい。


「すごいぞこれは……ッ!」


 振り返ると、セオが魔物の死骸を夢中で掘り返していた。

 ツルツルの頭蓋を剥いで、剥ぎ取った魔石に見入っている。


「高濃度、しかも露出しているなんて!……なんと都合のいい?」

「セオ、今はやめとけ」

「これは回収するべきだ」

「持てる分だけで十分だ。帰りに回収できるかどうかは、そのとき考える」


 そう言いながら、自分の袋に魔石をいくつか詰め込んだ。大きな魔石だ、すぐにいっぱいになってしまう。

 セオは魔石を漁るのをやめて何かを考えているようだ。


「ちょっと入ったらすぐに遺跡が見えたぜ。かなり大きそうだ、さっさと行こう」

「そうだな」


「ま、待て!うぐっ……!」

「おっと」

「これはきついな」


 レベルアップだ。それもこれまでに無い大きな変化。まぁ当然か。倒しやすいとは言え、強い魔物ではあった。それを群れで討伐したからな。


 特にきつそうなのがセオだ。額に汗を浮かべ、背を丸めて膝に手をついている。全身に流れ込んだ変化の波に耐えきれていないようだった。


 ――――――――――

 名前:セオドリック・エヴァンシャー

 年齢:31歳

 職業:魔導技術者

 レベル:1 → 28

 HP:60 → 1680

 MP:80 → 2240

 耐久:8 → 224

 筋力:12 → 336

 敏捷:9 → 252

 知力:48 → 1344

 魔力:10 → 280

 幸運:10

 スキル取得:「疑似溶融」「精密構形」「構造解析視」「魔術Ⅰ」「記憶合金制御」

 スキル:〈魔導設計〉

 ――――――――――


「セオ、落ち着いて呼吸を整えろ。一気に力が増しただけだ」

「……何か見えているのか?私はどう変化した」

「どう?どう言えばいいか。セオは魔力を鍛えてないよな?それが30倍近くになっているはずだ」

「30倍?……馬鹿げている……」

「そう言われてもな」

「最初は変な感じってのは分かるぜ」


「30倍などと、超人ではないか。それに、出力が上がれば相応のエネルギーも必要になるはずだ。……しかし、お前たちに異常な食欲など無かったな」

「あぁ、その辺りは考えた事もないな。強くなる分に問題は無いだろう?」

「問題?あるさ。だが今はそれを論ずる時じゃない。もう大丈夫だ」

「そうか。力や体力も大幅に増している。これからは楽になるはずだ。少し体を鍛えたら一気に強くなるぞ」

「必要ない」


 立ち上がってさっさと歩き出した。確かにこんなところで悠長に話し込んでいる場合じゃない。セオに続いて森に入った。




 森の中は、異様なほど静かだった。

 獣の気配が無い。これは全部、食われたか。あれだけの数が無差別に食っていたとすれば、この辺りに生き物は残っていないのかも知れない。


 歩き始めて十分もしないうちに、森の奥が開けた。

 そこにあったのは、森に呑まれ、僅かな残骸が残るだけの遺跡だった。


「ここが遺跡だな」

「既に遺跡とは認定されていない。旧クラン=テア遺跡。十分な調査の後、ただの石群に保全の価値は無いと、放棄されて久しい」


 蔦に覆われた石壁、崩れた石塔、割れた石畳。確かにそれっぽいが、適当に石を積んであるだけと言われればそんな気もする。


「おい、これ見てくれ」


 フォルクは瓦礫の間を指差した。踏みつけられた植物、いくつもの凹みと擦れ跡がある。複数。しかも何度も往復した形跡。


「さっきのやつらがここを通っていたか」

「やっぱり遺跡に住み着いてたやがったのか?」

「少なくとも、ここを通ったことはある。もしくは、ここで……」


 言いかけたときだった。


『ウシ!』


「一匹だけか」

「よっ!」


 カツンッ!フォルクの投げナイフが魔石を砕いて終わりだ。


「余裕があるなら魔石は残してもらいたいのだが」

「……これだけ?」


 フォルクがナイフの血を拭いながら、周囲に気配がないか確認する。セオも後ろで構えていたが、動く気配はもうない。


「どうやらここにいたのは確かだな」

 この場所が魔物の通り道だったのは間違いない。


「痕跡を追ってみよう。気を抜くなよ」

「あっちに続いてるな」


 魔物の痕跡は、瓦礫の合間を縫うようにして続いている。何のためかは分からないが、何かを運んでいたようにも見えた。

 進んでいる間にも単発で襲撃があるので、それが道の確認になっている。

 慎重に石を乗り越えながら、フォルクが先を見やる。


「なんだあれ?穴が空いてるぞ。通路?」


 俺もそちらへ目を向けた。崩れた石床の一部に穴が空いたように、地下へ進む螺旋階段があった。


「続いてるのか?」

 思わず呟いた俺の声に、セオが歩み寄る。穴の縁に手を当て、崩れたタイルの断面を確認しながら、低く息を吐いた。


「自然に空いたものじゃない。……無理やりこじ開けたように見える。削られた跡があるな」

「誰かが、ここを開けた……?」

「あるいは、何かが、な」


 瓦礫に埋もれていたとはいえ、こんな目立つ場所に地下への入り口があったとは。以前の調査で見落とされた理由は分からないが、こんな物は思いもよらなかったんだろう。


「下に通路が続いているようだ。魔物に関係しているのは間違いないだろう」

「わかった。行くぞ。慎重にな」


 地下へ続く階段は暗く、鉄の匂いが立ちこめていた。


「ふむ、大丈夫そうだ。ここ以外にも空気を逃がしている場所があるのだろう。一応、松明を低く持て」


 ぐるりと螺旋を描くように、金属の階段が下へと続いている。俺たちは順番に足を踏み入れ、慎重に降りていった。足音が反響し、やけに大きく響く。


 魔物の気配はない。


 だが、それが逆に不安になる。魔物を倒している方が気が楽だ、さっさと襲ってこい。

 階段を降りきると、視界の先に短い通路が続いていた。地下なのに幅が広く、天井も高い。長さは二十メートル程度か。


「なんだこれは……!この壁はすべて金属だぞ!素晴らしい……」

「落ち着け、今は先に進むぞ」


 短い通路を抜けたその先、視界が大きく開けた。


「……っ」


 思わず、足が止まった。

 そこは大きな空間だった。地下とは思えないほど広く、高い天井が闇に溶け込んでいる。

 そしてその中央に、異様な物。


「……な…これは………」



 ガラスのような透明な壁。その中に浮かんでいるのは、頭の無い巨人だった。

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