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異世界勇者より地元の重装片手剣の方が強いに決まってるよね! ~巻き戻り脳筋兵士は堅実に最強戦力を育てる~  作者: 無職無能の素人


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第19話 モンスター

 階段を降りた先、短い通路の奥に、それはあった。


 最初は何を見ているのか理解できなかった。何かの装置、だろうとは思ったが──透明な壁の向こうに浮かぶ、人の形をしたそれが、俺の想像を超えていた。


 でかい。ざっと見積もっても十メートルはある。人型ではあるが、頭がない。腕も脚も長すぎて、まるで人を真似た何かのようにしか見えない。


 何かが満たされたその壁の中は、俺が今まで見たどんな魔導装置よりも綺麗で、静かで、恐ろしかった。淡く七色に光る何かに包まれ、巨人の体がゆっくりと揺れていた。

 美しさすら感じる。なのに首から上は切られたかの様に何も乗っておらず、男女どちらの特徴も無かった。




 セオが最初に動いた。無言のままゆっくりと装置に近づく。反射的にフォルクが警戒態勢を取った。


 俺も続く。距離を詰めると、ようやくその全体像がはっきりしてきた。


 巨大な透明の壁は、下部が台座のような基部と接続されている。金属と何かの石が組み合わさった、不思議な作りだ。魔導装置のように見えるが、こんな物は見たことがない。


 壁内には何かが充満し、ゆっくりと循環している。基部の隙間からかすかに光が漏れていた。まだ機能している。少なくとも停止していない。


「何かを生み出す装置に見える。何らかの意図があるのだろうが……これが本物の古代遺跡というわけか」


 彼の目は人型から外れない。興奮と驚きが入り混じったような視線だった。


「このヒトも誰かが作ったのか……それとも……」


 何かに包まれて浮かぶ人型。よく見れば、関節や筋繊維のような構造まで、精密に作られていた。骨組みのようなものはなく、すべてが柔らかそうに見える。けれど、全体から伝わるのは異常な存在感だった。


 不意に、そいつが震えた。

 人型の肩がわずかに上下に波打つ。揺れたんじゃない、動いたんだ。


「……おい、見たか?」


 誰に向けたのか、自分でもわからない問いだった。思わず一歩、後ずさる。

 震えは一度きりじゃなかった。すぐにもう一度、今度は確かに――背中のあたりが、脈打つように膨らんだ。

 それは大きく膨らんでいき、背面が……裂けた。


 中から何かが出てくる。滑るように這い出し、下部に接続された管へと吸い込まれていった。

 すぐに、それがどこに向かったかがわかる。近くの壁にある空洞から何か滑り落ちる音がする。そこから、ぼとりと――


「……あれは」

「同じだ。間違いない……!」


 フォルクが声を震わせた。だが、それは恐怖のせいじゃない。確信だ。俺も、はっきりわかった。

 こいつが発生源だ。

 この装置が――この巨人が、あの魔物たちを作っている。


 動き出す前に大剣で首を落とした。辺りに血が撒かれる。


「すごい……すごいぞ……!」


 背後で呟いた声に、俺は思わず振り返った。


 セオが、目を見開いたまま装置を見つめていた。いつもの無表情は消え失せ、瞳孔がわずかに開き、顔には狂気が張り付いている。


「……セオ?」


「この構造、間違いない。生体構造を利用した自動生成機構。しかもまだ稼働している!一体エネルギー源は何だ…!」


 セオは魔物が生まれた直後に通った管に歩み寄った。道具を取り出し、装置を調べ始める。

 観測道具をかざしながら、彼は小刻みに震えていた。


 俺は、ひとまず武器を納めた。魔物は排出されたばかりで、こちらを認識する前に倒した。巨人も今は静かに沈黙している。


「破壊しよう」

「待て。停止させたい。頼む、壊させないでくれ、ガルド」


 そう言った彼の目には、明らかに狂気が籠められている。普段の冷静さはどこにもない。


「止められれば、内部構造が保存できる。エネルギー源、あの人型の正体、魔物を生み出すメカニズム。どれも解析できれば、人類にとって重大な資産になる。それを破壊するなんてとんでもない!」


「……冷静になれ。お前、今、瞳孔開いてるぞ」


「当然だ。見ろ、これがどれだけ貴重かわかっているのか!?」


 セオは口元に笑みを浮かべた。普段の彼が決して見せない表情だ。欲と、純粋な興奮と、執着。全部が混ざり合っていた。

 まるで、狂気に一歩踏み込んだかのような危うさ。

 だが――この男が本気で言っているのもわかった。


「……わかった。止められるなら、止めてみせろ」

「ガルド、大丈夫かよ」

 破壊が必要になったときは俺が決断する。それでいい。


 セオは頷き、装置の各部へ歩き出した。観測道具を使いながら、静かに、確実に構造を解析していく。その動きは無駄がなく、けれどどこか陶酔しているような危うさを含んでいた。


 セオが装置の周囲を調べている間、俺は魔物が排出された先を調べた。管は途中で切れ、そこに無数の破片と朽ち果てた鉄の塊が転がっている。

 金属製の枠、歯車の破片、そして押し潰されたような円筒部。明らかに何かの機械だった。機能は停止している。ここで何かをしていたとすると――


「これ……生まれた魔物を処理する装置か?」


 俺が呟くと、背後からセオの声が返ってくる。


「おそらくそうだ。構造から見て、ここで生成された魔物は即時処理されていた可能性が高い」


 処理のために造られた魔物。

 それはまたなんとも……。


「脆く、高エネルギーで、魔石の位置も取り出しやすい――処理しやすく造られてる、ってことか?」

「うむ。まさにそうだな」


 後ろでセオが頷いた。もう表情には微笑すら浮かんでいる。


「ただ魔物が発生しているのではない、デザインされたものが生まれているのだ」


「それって……材料ってことか。魔物が」


「そうだ。魔物は資源だ。何故魔物にしなければならなかったのか……その理由があるはずだ。エネルギーをそのまま使えなかった理由。そのエネルギーをどうやって生み出したか。いや、生み出したのではなく元からあるものか。それを利用可能にする為に魔石を介した。魔石をもつ魔物を生む魔物か。いや、そもそも魔物とは何から生まれているのか、自然発生する場合は何を元に生まれている?同じものから生まれているとしたらそれが……」


 セオの声がやけに冷たく聞こえた。だが、それ以上に、その理屈があまりに自然すぎて、俺は言葉を失った。


 この施設は、魔物を育てる場所じゃない。魔物を封印する場所でもない。


 作って、壊して、使う場所だった。


          ◇◆◇◆◇


 セオはほとんど口もきかず没頭していた。いや、途中からは言葉を口にしていても、俺たちに話しかけているわけじゃなかった。仮説と解釈を並べ、すぐに訂正し、また次の検証へと進む。その繰り返しだった。


 時折巨人が震えて魔物が生み出されるが、すぐに魔石を砕いている。首を落とすと汚れがな。


 フォルクは途中で寝た。俺は盾を磨きながら、セオの表情を時々観察していた。

(もうどうでもいいからさっさと終わらせてくれ)

 そんなうんざりとした気持ちを抱えながら、俺たちは黙って地下の空間にとどまっていた。


 そんな静寂の中、急に足音が響いた。


 俺はすぐに立ち上がり、通路の方へ身構える。フォルクも同様だ。


 現れたのは、一人の若い男だった。黒い外套をひらひらさせ、銀の留め具が胸元で光っている。年齢は俺たちと変わらないか、むしろ少し下かもしれない。気取った立ち姿に、どこか背伸びしたような傲慢さが滲んでいた。


「ちっ……なんだよ、違うやつじゃん。めんどくせぇ」


 男は俺たちを見渡しながら、大きなため息をついた。


「お前、何者だ」

「俺?そんなの名乗る必要ある?別に知らなくていいし。お前らこそ、ここでなにしてんだよ?」

「……知っててここに来たんじゃないのか」

「は?こんなヘンな施設の中身なんて知らねーよ。けど、上を壊したのは俺の仲間だし?来たら壊れた装置あるし、誰か調べてるし……ってことは?」


「仲間だと?お前たちが魔物を生み出して村人を襲わせたのか。話を聞かせてもらうぞ」


「なーんか面倒になりそうだ……処理しとくわ。安心しろ、すぐ終わるから」

 言うが早いか、懐から魔石を取り出して投げ捨てた。


 床に落ちた瞬間、魔石から肉が盛り上がり膨らんでいく。それは見る間に形を変え、やがて一体の魔物となった。それは巨大な体躯、黒い肌、異様な一つ目。


「これはあの時の!?」

「あぁ知ってんの?じゃあそこそこ強いんだ。ほんとは連れて来いって言われてんだけど、ここからじゃ面倒だしさ、代わりにサービスしといてやるよ」


 男は更に魔石を追加する。合計5つ。その全てから同じ魔物が現れた。


「何がしたい。そいつをけしかけて、どうするつもりだ」

「別に何も?お前らが死ねば問題なくね?俺は帰るし、勝手にやってて」


 男は満足げに鼻を鳴らし、背を向ける。


「せいぜい楽しんでくれよ。俺のモンスター、ちゃんと育ててあるからさ」

 そう言い捨てて、振り返りもしないまま引き返していった。


「待ちやがれ!」

「フォルク!あの男を追え!」

「おう!」


 フォルクは即座に駆け出した。魔物たちを飛び越えて男を追う。


「セオ、後ろに下がれ。調査は我慢しろ」

「早く終わらせてくれたまえ」


 魔物の一体が動いた。圧倒的な体躯の塊が地響きを立てて突っ込んでくる。振り下ろされる拳に、真っ向から斬撃をぶつけた。


「くっそ、硬い……!」


 刃が入らない。お構い無しに振り抜いて腕を砕くが、一撃で大剣が歪んでしまった。以前戦ったやつとは随分違うようだな。

 それでも俺の敵じゃない。大剣を鉄塊として扱い、倒れた1匹を叩き潰す。

 二体目、三体目。背後のセオを守りながら、曲がった大剣を叩きつけて破壊する。力尽きた魔物は煙になって消えた。

 だがそれと引き換えに、無理な扱いをした大剣も限界が来る。


 ギャリィィン!


「クソッ!硬すぎるんだよ!」

 大剣が半ばから砕け散る。息を整える暇もなく、残る二体が連携して動き始めた。


 一体が俺を抑え、もう一体が――


「セオッ!!」


 巨体が一直線にセオへ迫る。俺の体勢は崩れていて届かない。


 ――間に合わない!


「屈めぇッ!」


 通路の奥から戻ってきたフォルクが、手にした槍を投擲した。


 ギュドン!凄まじい勢いで飛ぶ槍が魔物の胸を貫く。狂ったように咆哮を上げたその巨体は、バランスを崩してそのまま装置の中央へと突っ込んだ。


「おい、そっちは――!」


 ガアアン!!!


 重い衝突音と共に、ガラスのような透明の壁が砕け散る。


 輝く何かは霧散し、支えを失い崩れ落ちる――巨大な、頭部のない人型。


 ドクリ…


 俺は反射的に盾を構え直した。


 ――何かが、目を覚ます。









 ――――――――――

 名前:ガルドリック

 年齢:15歳(23歳)

 職業:勇者

 レベル:29 → 33

 HP: 8640 → 9360

 MP:1880 → 1920

 耐久:993 → 1113

 筋力:779 → 867

 敏捷:525 → 585

 知力:463 → 507

 魔力:400 → 420

 幸運:10

 スキル習得:「鋼の翼壁」

 スキル:「勇者の適応」「ステータスリード」「グローリアスタッチ」「導きの直感」「抑制」「調理技術」「ストレージ」

 ――――――――――

 名前:フォルクハルト

 年齢:17歳

 職業:村人

 レベル:23→32

 HP:2990 → 4160

 MP:690 → 960

 耐久:483 → 642

 筋力:414 → 576

 敏捷:529 → 736

 知力:230 → 320

 魔力:115 → 160

 幸運:28

 スキル習得:「軽足」「舞踏戦槍」

 スキル:「投擲術」「見切り」「仕掛け屋の直感」「斥候の足」

 ――――――――――

 名前:セオドリック・エヴァンシャー

 年齢:31歳

 職業:魔導技術者

 レベル:28

 HP:1680

 MP:2240

 耐久:224

 筋力:336

 敏捷:252

 知力:1344

 魔力:280

 幸運:10

 スキル:〈魔導設計〉「疑似溶融」「精密構形」「構造解析視」「魔術Ⅰ」「記憶合金制御」

 ――――――――――



「鋼の翼壁」魔力を鋼に変える

「軽足」体重移動や姿勢の使い方が上手くなる

「舞踏戦槍」軽やかに舞う槍の才

「疑似溶融」触れた鉱物・金属を溶かす

「精密構形」精密な加工を行う技術

「構造解析視」触れた物の構造を理解する

「魔術Ⅰ」魔術の才

「記憶合金制御」自らの魔力を練り込んだ合金を制御する

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