魔法大会残り18人 『黒曜剣士』 対 『光天翼麗』
赤色の魔法少女と薄緑色の魔法少女の戦いが終わり、俺の出番が回ってきた。
美雪は相変わらずの戦略により勝利を得て、茜は絶対的な火力、魔力無力化で魔力無力化の壁を破壊するといった荒技で勝利を得た。
あそこまでの戦いを見せられて俺も頑張らないといけないと思ったし、魔法を教えた身として負けられないなと思った。
女になれないというハンデはあるものの、勝つ為の努力はしてきたし、全く勝てないなんていうことはない。
会場に入り開始位置に着く頃には、対戦相手も向かい側に立っていた。
【私は願う!過去、未来、そして今を築く。闇を照らす光と共に!】
対戦相手が変身をして、白色の魔法服を纏った。
こいつの呼び名は確か、
『光天翼麗』
と呼ばれていて、天にも届く綺麗な光の翼で、対戦相手やモンスターを追い詰めるだかで、英名では呼ばれることのない異名がついたはずだ。
さて、俺も今回からは変身しておかないと不味いな。
【俺は願う。未来永劫、自由に生きる事を】
女の魔法少女になるとは別の詠唱をして、俺の服が変身していく。
服の色は全身真っ黒で、肩が尖り、マントがある俺だけの魔法服。
「いくら黒色聖母様でも、男の状態には負けませんから」
白色の魔法少女は俺にそんな事を言ってきた。
「そうか、だが、言っておきたいことがある」
白色の魔法少女の言葉に勝ち負けは知らんが、ただ1つ言いたいことがあった。
「なんですか?」
「あんたが言ったみたいに今の俺は男だ。だから聖母なんかじゃない」
元々黒色聖母という呼び名が嫌いなだけにそこだけはハッキリしておきたかった。
周りから噂としてどんなふうに言われても構わなかったが、さすがに直接言われるのはムカつく。
女の時ならまだ仕方ないと思う部分もあったが、男の時に言われると更にムカつくのだ。
「分かりました。では・・・『黒曜剣士』様と呼びますね。最近の呼び名の流行りは宝石や原石に表すことが多いみたいなんで」
「様も入らないが、それくらいなら良いだろう」
黒曜剣士、通称オブシディアンか。まあ、黒色聖母よりも男らしくて良いかもしれないな。
そういえば、先ほどメールで新聞部が勝手に美雪と茜の異名を決めていたな。
美雪が『藍色癒姫』、茜が『日長直猪』と書いてあったな。
確かにどちらも宝石や原石などの類であり、俺の異名もその仲間である。
「それでは、両者共に準備が出来たようなのでこれより対戦を開始します。数字の光が0になると共に始めてください」
そんな事を考えていると学園長の声が聞こえてきた。
そうだな、そんなことよりも今は試合に集中しなければならないな。
魔法で映される数字が0になると同時に、お互いに魔法を発動し合う。
【ディナイアル・ウィング】
【シャイニング・ウィング】
俺の肩が尖っているところから、黒く見える翼が発生した。
この翼は黒いわけでなく、光などを拒否しているから黒く見える。
対して光天翼麗は、背中から輝く白色の翼を発生させた。
『ディナイアル・ウィング』くらいなら、女に変身せずに済む程度の魔力消費量だ。
徐々に魔力を消費していく継続型だが、一度生成することが出来れば以降はあまり魔力を消費しない。
あとは、如何にして光天翼麗に近づき、この魔器で斬るだけだ。
そう思い、俺は腰に差している黒い剣をに手を掛ける。
光天翼麗は『シャイニング・ウィング』を羽ばたかせながら後ろに後退していく。
逆に俺は|『ディナイアル・ウィング』を羽ばたかせて光天翼麗に向かって前進する。
【ライト・レイ】
光天翼麗は後退しながら、近づいてくる俺に向かって、指先から直線上に高速に放たれる攻撃的な光を放ってくる。
光天翼麗としては迎撃のつもりだろうが、
「ありがたい事だな」
俺にとっては有難いことだった。
目には追えない程の『ライト・レイ』を黒い剣で斬る。
直線上に動くのならある程度は予想できるから斬る事も容易くはない。
そして、斬り裂いた『ライト・レイ』は消失した。
「っ!」
その光景に光天翼麗は何があったか、いくつか予想を立てたみたいだ。
この黒い剣の魔器の能力を知られたところで負けないけどな。
【スピードアップ・ウィング】
光天翼麗は、魔法を使って翼で移動するスピードを上げた。
普通の魔法が無効化されるなら、無効化されない程の魔法を放たなければならない。
ただし普通の魔法じゃないなら、時間を必要とする。
だからこそ距離をとる訳だな。
だがな、
【スピードアップ・ウィング】
そんなこと読んでいるに決まっているだろう?
俺も同じ魔法を使う、ただし光天翼麗よりも速く飛ぶ。
その分、魔力を消費してしまう。
それだけの魔力を使ったらいつもの俺だったら女に性転換してしまうわけだが、今回はそうならない。
何故かは・・・、秘密だ!
そんな訳で高速度に後退していく光天翼麗に、さらに高速度に近づいていく男の姿のままの俺。
さあ、ここからだ!
「っ!【オーロラ・ウォール】」
光天翼麗は俺が近づいてきたことに慌てて、『オーロラ・ウォール』を張る。
『オーロラ・ウォール』は、光の壁を張る物だが、その光は時間や見る角度が変化すると、見える色が変わる不思議な魔法だ。
普通の魔法などでは打ち破ることの難しい壁。
だが、そんなの読んでいるに決まってるだろ。
【マイ・スペース・ソード】
黒い剣に『マイ・スペース』をかけて、そのまま『オーロラ・ウォール』に向かって剣を一振りした。
その一振りで、『オーロラ・ウォール』は消え去った。
【シャイニング・ショットガン】
だが、さすがに光天翼麗も男のままの俺を油断出来ない相手と認識を改めたのか、『オーロラ・ウォール』が消えることを読んで準備していた剣の一振りでは防げないほどの多方面の魔法攻撃をしてきた。
【ショート・トランジション】
俺は魔力を多めに消費する魔法を使い、『シャイニング・ショットガン』の攻撃範囲外の場所に一瞬にて移動する。
普通なら女に性転換する魔力消費量なのだが、とある事情により女にはならない。
さて、これで終わりだ。
【マイ・スペース・ソード!】
先程『シャイニング・ショットガン』の攻撃範囲外と説明したが、それは光天翼麗のすぐ後ろで、移動した後に時間を開けずに、俺は今現在の女に性転換しないくらいの魔力を全て使い、剣に『マイ・スペース』を掛けて光天翼麗を斬る。
「っ!魔力よ!私を守れ!」
光天翼麗も俺が後ろに回ったことに少し遅れて気づき、そして、この距離では俺の攻撃を受けるまでに、魔法が発動する時間が無いこと。
また、ここまで近づくと俺と光天翼麗までの距離はほぼ無く、魔法が発動するに際して、物体がある所に魔法は発動し辛いというこの状況を一瞬で見抜き、身体にある魔力を体や身に着けている物の一点に集中させて、その部分のみの防御力を高めるという魔法の基礎をしてきた。
今回は、魔法服の一部、俺が斬ろうとしている所に魔力を一点に集中させて防御力を高めた訳だが、
意味ないんだよ。
俺の剣は光天翼麗の魔法服を軽く斬り裂きそのまま、身体に剣で叩きつけた。
身体は斬る事が出来なかった。
その理由は、保護の影響で物理ダメージがそのまま精神ダメージに変換された訳だ。
そうして、光天翼麗は倒れたのであった。
俺はそれと同時に『ディナイアル・ウィング』と魔法の戦闘服を解除する。
今できる最大の魔力を使った為、これ以上、維持に魔力を使うと、女に性転換してしまうからな。
少しでも消費削減できる格好でいないとな。
こうして、俺と光天翼麗の対決は、俺の勝ちで終わったのだった。




