魔法大会残り18人 淡い水色の魔法少女 対 黄色の魔法少女
男として魔法大会に出場することが決まったわけだが、男としての俺では魔力があまり強くなく、優勝出来る確率が低い。
だから、これから大会までの間に優勝出来る方法を考えていかなければならない。
男としてのメリットは、女の時に比べて魔力を使わない素の力が強く、魔力に対して敏感という事だ。
デメリットは、魔力が弱い。これに限るが、これが一番大切な事だ。魔力が弱ければ、魔法を発動しても弱く、魔法に対する防御力も弱くなる。
となれば、相手の魔法に当たらずに自らの攻撃だけを与えていくしかない。
魔法無しでの物理攻撃だって、特殊な魔法服で精神ダメージに置き換えられて気絶する。それを狙っていくしかない。
如何に少ない魔力で、相手の攻撃を避け、相手にダメージを与えるか。
となれば魔器も変わってくるし、魔法服も決まってくる。
男としての俺の魔法服は今までなかったけど、この際に作っていくか。
色は黒だな。相手の攻撃を食らってもなるべく抵抗力を高めていきたい。
後は、攻撃の為に魔器を使うか、守りの為に魔器を使うかだが、小さな魔力しか使えない以上は、火力に期待できない。
小さな魔力で移動力を補ったほうが、いい気がするし、そのような魔器を使用していきたいと思う。
大会までの期間はあと少ししか無いわけだが、練習相手として、美雪や茜に手伝ってもらった。
魔力を読み取り、魔法が発動する前に、その魔法の範囲から避けることは上手くいった。
その為、何度か勝てているが、完璧に避けれるわけでもなく、何度か攻撃を受けて気絶して負けていたりもする。
とはいえ、美雪や茜は、もう上級ランクといっても過言じゃ無いわけで、それだけに勝てるのは嬉しいものもある。
あるが、優勝出来るとは思えない結果を残しながら、大会になってしまったのであった。
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大会は、女性であれば参加を希望した人が全員受けられて、大人数となるが、ある程度の人数が絞られるまでは、魔法実習室での対戦となった。
それが何組もの同時進行で行われ、同じ日に何度も行われて初日は高校の部門で300人ほどいたのが、2日目では18人にまで絞られた。
俺は、初日はとても厳しかった。
1日1試合ならその分魔力を使えるが、何試合もとなると、魔力が枯渇してしまうからだ。
だから俺は初日を戦闘用の魔法服でなく、学生服で対戦を行った。
何故ならば、学生服の生成する魔力よりも戦闘用の魔法服を生成魔力の方が多く消費する為、消費量の少ない学生服で戦ったという事だ。
あと元々学生服も、防御の面では優れている為、問題ないと思ったのだ。
ああ、ちなみに学生服のほうも俺のオリジナルだ。女ばかりの学校に男用の学生服はなかった。だから生成するのに消費魔力が少なく、女子用の学生服と似た感じの物を作ってみた。
そんな学生服を着て、相手が良かったのか初日は勝ち残ることが出来た。
美雪や茜も大会に出場していて、見事勝ち残っている。
2日目の朝に残った人達のトーナメント表が張り出された。
両端の2つのシード枠には異名持ちが入り、俺と戦う相手は俺の知らない相手だった。
知らないということは、有名じゃ無い相手ということで、勝ちに行きやすい相手なのだろうか。
そうして大会の2日目が始まったのだった。
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高校の中では、500人ほどの人数がいる。その中で上級ランクと呼ばれる人たちは100人ほどだ。
上級ランクの中にも強弱があり、俺や美雪や茜はその中でも弱い人達と当たれたみたいで、ここまで勝ち上がることができた。
しかし、俺たちを除く残った15人はいずれも上級ランクの強者と呼ばれるもので、その人達と戦っていかなければならない。
大会の2日目からは、1人に対して1日1試合と決められているため、その試合毎に全力を出せるのはありがたい。が、相手も同じ条件な為に、自分だけが有利になるとは言えない。
全力対全力ということで、白熱した魔法の打ち合いが繰り広げられることだろうと、観客は盛り上がっている。
そんな感じで、これから美雪の対戦が始まろうとしていた。
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私こと真白 美雪は大会に勝ち抜いて、なんとか2日目まで行くことができた。
勝ち抜いた中には上級ランクの人もいて、苦戦する事もあったけど、暗い赤い魔法少女みたいに対策を打ってくる訳でもないので勝つ事ができた。
よく考えてみるとそれは異常な事に気がついた。
前までは上級ランクに勝つなんてあり得なかったのにも関わらずに、今では勝てるようになっている。
回復魔法が得意なのは変わらないが、作戦次第では、攻撃魔法が得意な相手にも対抗できる。
これは、蓮野さんのお陰で違いなかった。蓮野さんの指導を受ける前までは、そこまで強くなるなんて思ってもいなかった。
しかし、指導を受けてみると辛い事もあるが、徐々に強くなるのが分かった。
今も辛い事は続けていて、それは日常的な魔力の圧縮な訳だが、これのお陰で自身の魔力が強くなった事が実感できる。
そんな訳で自信が満ち溢れているけれど、これから戦う相手からが、この大会の本番みたいなものだ。
対戦相手は今までよりも格段に強いはずだ。名前も知られていたりする。
だからと言って不安になったりはしない。
「よし!がんばろう!」
自分に語りかけるようにそう言って、勇気付ける。
そして、私は対戦する会場に入っていった。
会場に近づいて行くたびに観客の歓声が大きくなってくる。
初日は実習室だった為に、その歓声を味わなかった訳で、先ほどかけた勇気が切れていきそうになる。
けれど、うん・・・
私には私にできることをやるだけだ。
そう自分に言い聞かせて、心を落ち着かせる。
そうして、会場の開始位置に着くと、歓声はさらに大きくなった。
向かい側の方には、茶色の短髪で小さい女の子がいた。
小さいと言っても私よりも年上で、魔力も高いはずだから油断できない。
お互いに礼をして、魔法少女になる呪文を唱えていく。
【私は願う、過去、未来、そして今を築く。この力で沢山の命を救う事を!】
そして、私は淡い水色の魔法少女になった。
【私は願う、過去、未来、そして今を築くんだ。誰よりも速く辿り着く、この力と共に!】
そして、茶色の短髪で小さい女の子は、髪の色や服が黄色くなり、髪の質はトゲトゲ、でも可愛らしい姿に変身した。
そう、黄色の魔法少女になったのだった。
黄色から判断するに電属性が得意そうかな。
となると、私の鞭の魔器は使えそうにないのか。
相手よりも強い電属性が放てるならまだしも、そんなことできる訳ないのだから、鞭の魔器に魔力を使うだけ無駄に決まっている。
そうなると攻撃手段が減った訳だが、私だって大会までの間、何も考えなかった訳じゃ無い。
何処まで出来るか分からないけど、私に出来ることを全て出せばいいんだ。
「それでは、両者共に準備が出来たようなのでこれより対戦を開始します。数字の光が0になると共に始めてください」
学園長先生が通信魔器でそう言い終わると同時に、私と黄色の魔法少女の真ん中の上に、魔法で作られたと思われる数字が10と表示された。
1秒ずつ減っていき、そして0になった。
【エレタック!】
【ウォーター・ウォール】
黄色の魔法少女は戦闘開始したと同時に、魔法を使いながらこっちに向かって突進して来ようとしていた。
私も開始と同時に、私の目の前に『ウォーター・ウォール』を出現させる。
私が対戦している黄色の魔法少女は有名で、魔法により高速移動を可能とし、その高速移動で敵を倒すと聞いた事がある。
だから、開始と同時に突っ込んでくる事に警戒して『ウォーター・ウォール』を張った。
そして、それは正しかったみたいだ。
黄色の魔法少女は輝いたと思うとその場から一瞬消えて、少しだけ前に移動したところで止まった。
『エレタック』の効果は、自身に電気を付与して移動速度を急速にあげる。ただし、移動は直前にしか出来ない。
だから、『ウォーター・ウォール』で道を塞いでしまえばいい。
【エレタック】
黄色の魔法少女はもう一度魔法を使って、私に向かってではなく横に移動した。
【ウォーター・ウォール】
『ウォーター・ウォール』がないところから攻めてくるのは分かっている。
だから私は黄色の魔法少女がいくと思うべき場所を見極めて、私とその場所の直線上になるところに『ウォーター・ウォール』を作った。
それが続いて、私の周りは『ウォーター・ウォール』で囲われた。
すると、何を考えたのか黄色の魔法少女は、『ウォーター・ウォール』があるにもかかわらずに、『エレタック』を使って向かってきていた。
無理やり押し通ってくるのかな?
【ニード】
私は魔力を練って次の魔法の準備をする。
【ファインミスト】
そして、私は頭上に向けて、目では見えない程度に圧縮されている水の霧を発生させる。
圧縮されているため、それは壁のような役割を持つ。
『ウォーター・ウォール』と何が違うのか、それは形を変えられる自由性と、目に見え辛いという事。
『ウォーター・ウォール』で周囲を囲んでいるが、私の頭上だけはまだ囲われてはいなかった。
だから、ここからくると思って、罠を仕掛けた形になる。
「っ!、【エレクトリック・アロー】」
案の定、頭上から黄色の魔法少女は現れ、『エレタック』でこちらに突っ込んで来ようとしていたが、こちらの魔法の意図に気づいたのか突進をやめた。そして上空にいる為、勢いを消せずにこちらの見えない霧の壁にぶつかろうとしたところを、無理やり『エレクトリック・アロー』という、電属性の魔法の基本攻撃を霧の壁に向けて放ち、その反動で霧の壁から離れていった。
見えない霧の壁に、『エレクトリック・アロー』がぶつかりそのまま消滅した。
よく、水は電気を通すというが、今回も実際に通すのだろう。
しかし、普通の電気は貫通するわけではない。空気中から水や霧という電気を通しやすいところに電気が流れて、そのまま水を伝って地面に電気が落ちていく。
もし水に私が触れているなら、そこから感電するかもしれないが、私は触れていないから感電しない。
私は水に囲まれている限り、電気に対して安全なのか。
確かに安全だが、絶対に安全という訳ではない。
もしも、魔力で電気の流れを操作する事が出来るような魔法を放ってきたら、いくら『ウォーター・ウォール』等に囲まれていても、電気が空気中から水中に入り、水中から私の周りの空気中に流れ、そのまま私に当たるように電気を操作できるとしたら、黄色の魔法少女の攻撃を与えられてしまう。
今回は咄嗟の魔法だったから、電気の流れる先を操作を設定しない魔法だっただけで、流れる先を設定されればまずい訳だ。
ただ、その魔法を発動するには、溜めがいるはずだ。
実際にそうしようとしているのか、黄色の魔法少女の攻撃が止んでいる。
だからそれに対する魔法を発動すればいい。
【ニード】
『ニード』により自身にある魔力を練り固める。
【ニード】
そして練って固めた魔力を、新たな魔力を取り入れながら練り固める。
そして、今ならまだ黄色の魔法少女は魔法を使ってこないだろうと思い、『ウォーター・ウォール』に手を当てる。
私が発動したのだから、私が意識して触れる分にはダメージを負うことはない。
この『ウォーター・ウォール』に使用されている水も、次の魔法に使うように想像しながら新たな魔法を発動する。
【ピュアウォーターミスト】
発動したと同時に私の周囲の『ウォーター・ウォール』は消え去り、代わりに目に見える霧が現れ始めた。
「え?、【エレクトリック・レイ】」
その事に、黄色の魔法少女が驚いたのか、溜めていた魔力を使って魔法を慌てて放ってきた。
電気のようなものが、まっすぐこちらに向かってきてるようだ。
だが私の近くにある霧とぶつかり『エレクトリック・レイ』は消えた。
あちらが考えた通りなら、そのまま直進してこちらにぶつかったんだろうけど、この霧は特別だ。
圧縮してあり物理的にも硬いし、何よりも純水な為、電気を通さない。
その霧は、私から少しづつ発生して、やがては会場を埋め尽くした。
ただし観客席には、会場の不思議な守りの魔法が付いている為、届いていない。
さて、これで私の有利な環境ができた訳だ。
この環境を作るために沢山の魔力を使ったけど問題ない。
この霧の中では電気は通らないし、黄色の魔法少女自体も動けない。
これが私の考えた最強の奥義であるのだ。これを発動したからには負けるわけにはいかない。
この霧の中で私は動ける。そういうように霧を移動すればいい。
それを黄色の魔法少女は分かったのだろうか。
「私の負けです。降参します」
と、黄色の魔法少女は言って、私の勝ちが決まったのだった。




